「人任せではいけない」陸前高田市議選に見た思い 「復興のその先」の危機感から多数混戦に

東日本大震災から8年半 忘れない、立ち止まらない

 岩手県陸前高田市で8日、東日本大震災後3回目となる市議会議員選挙が行われた。18議席をかけて26人が争うという多数混戦。出馬した市民のうち11人を新人と元議員が占め、現議会と市政に対して一石を投じるという構図になった。

 立候補者が少ない、定数に満たない-といった傾向が全国的に顕著な地方議会議員選挙にあって、これは異例のケースといえるだろう。同市議選の場合も、4年前までは定数をやっと1超えるだけの少数選が3回連続で展開されていた。

 もちろん、そこには8年半前の大震災による影響が多分にある。

 発災直後の2011年4月に行われるはずだった同市議選は9月に延期された。同年と、4年後の15年の時も、被災住民はまだ生活を立て直すのに精いっぱいで、「選挙どころではない」という人が多数派だった。

 さらに、早期復興をどう成し遂げるかが市民共通の最重要課題となり、過去の市長選や議員選挙で見られたような政治的な対立関係はおのずと希薄になっていた。「復興を停滞させまい」という意識が、党派を超えた連帯感を醸成し、新たなまちづくりを推し進めてきたことは間違いないだろう。

 一方で、それが議会と市当局の間の緊張感を削ぎ、なあなあの空気を生んでしまった側面もある。

 今回の市議選がこれまでから一転、定数を8人超える激戦となった背景には、21年度までの復興・創生期間終了後に対する、市民の不安の高まりが挙げられる。

 国の制度である土地区画整理事業により、7年、8年を経てようやく宅地や市街地の形が見えてきた。だが、そこに家や商店を建てる人は3割程度にとどまっており、新しいまちには“空白”のほうが目立つ。

 復興交付金といった国の補助により、予算規模が震災前の10倍にも膨らんだ自治体が、国からの支えを失ったら。十分に自立してやっていけるだけの産業や雇用が生まれているとは言えず、人口流出にも歯止めがかからない。

 「このまちは緩やかに死へと向かっているのではないか」

 そんな市民の危機感が、ようやく市政に目を向けさせた。行政に預けきりだったまちづくりを、わがこととしてとらえ、「復興のその先」を真剣に考えるようになった。その証左を、新人が多数出馬した今市議選に見る思いがする。

 被災地が本当の自立へ向かうにあたっては、おそろしく時間がかかっている。だが、そこに暮らす者が「人任せではいけない」と気づき、行動に移し始めた以上、何もかも遅すぎるということはないだろう。ここからが本当の正念場だ。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。現在は記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当する。

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