手動ブレーキに限界 京急事故 なぜ電車は止まれなかった

 横浜市の京急線の踏切で快特電車と大型トラックが衝突した事故。立ち往生したトラックに、時速120キロ程度で走る電車が衝突しており、改めて踏切の危険性を突きつけた。京浜急行電鉄の安全システムに異常は認められていないが、手動ブレーキに頼っているため限界も指摘される。

 同社によると、事故現場の踏切内の異常を知らせる信号は約340メートル手前にあり、電車の運転士は信号からさらに約260メートル手前で信号を見ることができた。つまり約600メートル手前で確認できた状況で、その時点で急ブレーキをかけていれば、100メートル近く手前で止まることも可能だった。信号は運転席から見えやすい位置にあり、京急は「見落とすことはない」と説明。実際、運転士はその信号の発光を確認し、「急ブレーキをかけた」と説明している。

 それでも、電車は止まれなかった。電車が最高時速120キロで走行していたとすれば、1秒間の遅れで約33メートル進む。わずか数秒の遅れで100メートル近く通り過ぎる場合もある。

 鉄道事故に詳しい関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「時速120キロの高速の電車を停止させるためには、信号の視認とブレーキのタイミングが重要。間に合わなかったのであれば、踏切への進入区間の時速を100キロ以下に落とすなど考えなければいけない。人の能力の弱点を補うため自動ブレーキはあった方が安全だ」と強調する。

 内閣府の交通安全白書によると、踏切内での列車事故は平成30年に247件。安部教授は「踏切の状況はそれぞれ異なっており、潜在するリスクも違う。交通量の多い踏切では、立体交差化を地道に進めることが必要だ」と提言する。

 ただ、最大の原因は、トラックの踏切内での立ち往生だった可能性が高い。運転手は事故現場から東南に800メートルほど離れた物流会社でグレープフルーツやレモンを積み、千葉県成田市へ向かう予定だった。

 成田へ向かうためには国道15号線に出たところで右折すれば、首都高速道路に乗ることができたが、運転手は国道で左折した結果、違ったルートで現場の踏切に入り込んでしまった。

 関係者は「一番安全なルートを教えたのに、なぜ違う道を通ったのか」といぶかしがる。トラックが道を間違えた可能性もあり、神奈川県警は自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで調べているが、運転手が死亡しているため、正確な解明が難しい部分もある。

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