「生きた証し」京アニ事件犠牲者ら新作エンドロールに

 放火殺人事件後初となる京都アニメーションの新作映画が6日、全国公開され、多くのファンが映画館に詰め掛けた。事件前日の7月17日に完成したこの作品には京アニの全スタッフが参加。通常、エンドロールや映画のパンフレットには1年以上の経験があるスタッフの名前が出るが、今回は犠牲者と負傷者を含む全スタッフの名前が記された。「制作に参加した全員の生きた証し」。京アニは理由をこう説明している。

 公開されたのは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝-永遠と自動手記人形-」。戦争で両腕を失った元少女兵のヴァイオレット・エヴァーガーデンが手紙の代筆業を通じ、さまざまな形の愛を知る物語で、テレビシリーズが昨年放送されている。映画はその続編となり、離ればなれになった姉妹の絆が描かれた。

 京アニによると、事件で犠牲になった35人と負傷した34人を含む全スタッフの名前がエンドロールやパンフレットに記されたのは、藤田春香監督たっての希望という。京アニは「災禍に見舞われたスタッフを含め、制作に参加した全員の生きた証し」としている。

 京都市中京区の映画館には午前9時からの初回上映前からファンが駆けつけた。犠牲となった監督やアニメーターらの名前が含まれたエンドロールが流れると、劇場内ではすすり泣く声や嗚咽が漏れ、上映後は数分間、拍手が鳴りやまなかった。同市伏見区の介護士、山岡奈美さん(38)は「亡くなった方々が確かに存在し、制作に関わっていたんだと改めて感じた」と目を潤ませた。

 大阪府守口市の映画館でも午前中からチケットを求める列ができた。同市の会社員の女性(40)は、「多くの才能が失われてしまったのかと改めて事件の重大性を感じた。名前を表示したことは、京アニの意地と誇りのようなものが伝わってきた」。大阪市の男子大学生(21)は「純粋に作品として楽しめた。これからもいい作品を作り続けてほしい」と力を込めた。

 一方、京アニは6日、来年1月10日に公開を予定していた次の新作「劇場版ヴァイオレット-」の公開延期を公式サイトで明らかにした。新たな公開日については、後日発表するとしている。

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