「生粋のアニメーター」京アニ今春入社の笠間結花さん 伝えたいもの探す途中

 京都アニメーション第1スタジオの放火殺人事件で犠牲となった笠間結花さん(22)。学生時代に手がけた作品からは、年齢とともにアニメーターとして成長していく様子がうかがえる。今春、京アニに入社し、業界でもトップクラスのアーティスト集団にもまれ、さらに才能を開花させる可能性を秘めていた未来が奪われた。

 両手を前面に広げる少女の上に、クマのぬいぐるみを抱いて倒れ込む少女。大阪成蹊大2年だった笠間さんが手がけたイラストだ。色鮮やかに彩色されたキャラクターたちは躍動感にあふれ、今にも動き出しそうだ。

 「生粋のアニメーターでした」。笠間さんの恩師で、同大芸術学部長の糸曽(いとそ)賢志教授(41)は、こう評する。糸曽さんは報道各社の取材を受けるにあたり、この作品を含む学生時代の約20点について、笠間さんの家族から「生きた証しとして胸をはって出したい」と託された。

 高校生のころからアニメーターを志していた笠間さん。キャラクターのオーバーなアクションや派手な構図を好み、一つ一つの動作を丁寧に描くことに強いこだわりがあった。その一方で、ストーリーを伝えることに対しての関心の薄さが課題だった。ただ、両立できるアニメーターは少ないという。

 変化があらわれたのは大学4年のとき。卒業制作で「就職活動」をテーマにしたアニメに挑戦した。就職活動中の女子学生が優秀なライバルと出会って挫折し途中で現実逃避をするが、最後はハイヒールを脱ぎ捨てて壁をよじのぼった先に光が見える-というストーリー。作品は、あこがれのアニメ制作会社に入ろうともがく笠間さんの姿そのものだった。

 折しも、この作品を制作中だった4年の秋に京アニに内定。苦労しながらも努力すれば夢がかなうことを実現した教え子の姿を糸曽さんは間近で見守ってきた。

 「作品は笠間さんの人生そのものですね」と後輩からも声をかけられていた。糸曽さんは「作品を通してコミュニケーションがとれたことを味わったのではないか」と振り返る。笠間さんが進化を遂げた瞬間だった。

 自身はアニメ界の巨匠、宮崎駿さんに師事して演出を学んだことのある糸曽さんだが、「絵が描ける上に、伝えたいものができたとしたら、彼女は将来、宮崎駿のようにもなれたはず」と惜しんだ。

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