京アニ、消防隊員の惨事ストレス懸念 消防庁が専門チーム派遣

 京都市伏見区の「京都アニメーション」(本社・京都府宇治市、京アニ)第1スタジオの放火殺人事件から間もなく1カ月。過酷な現場を体験した災害救援者らが心身に不調をきたす「惨事ストレス」の発症が危惧されている。体験から数週間が経過した後に表面化することも多く、消防庁は隊員をケアする専門チームを今月23日にも派遣する予定だ。一方、専門家は「京アニ作品のファンにも症状が表れる危険性がある」と警鐘を鳴らしている。(吉国在)

 事件は7月18日午前10時半ごろ発生。京都市消防局から、過去最大規模となる消防・救急隊員計約190人が出動したが、当初は激しい炎と黒煙に阻まれて建物内へ入れず、35人が死亡、34人が重軽傷を負った。

 「炎や煙で(建物内へ)入っての消火活動が困難だった。やりきれない思いがある」。最初に現場に到着した指揮隊長ら2人は7月26日に報道陣の取材に応じ、涙を浮かべながら当時を振り返った。2人が語った現場の状況は、極めて厳しいものだった。

 惨事ストレスに詳しい筑波大の松井豊名誉教授は、「使命感の強い消防隊員は、自責の念や無力感にかられやすい」と指摘する。

 惨事ストレスを防ぐため、京都市消防局は活動に関わった隊員らを対象に「よく眠れているか」など心身の状態をチェックシートに記入させ状況を確認。さらに、消防庁に臨床心理士ら専門家で作る「緊急時メンタルサポートチーム」の派遣を要請した。

 チームはストレス対処法の助言や指導を行う予定だ。消防庁の担当者は「1カ月以上たって症状が表れることも多く、継続的にサポートしていく」としている。

 惨事ストレスでは、不眠や動(どう)悸(き)、当時の状況がよみがえるフラッシュバックなどの症状が表れるという。悪化すれば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症することもある。

 平成7年の阪神大震災や地下鉄サリン事件で注目され、消防庁は15年に同チームを創設。今年4月時点の派遣実績は70件に上る。

 一方、惨事ストレスは偶然居合わせて救護にあたった近隣住民や、報道で見聞きした人々にも表れることもある。

 松井名誉教授は、京アニ作品を通じて「生きづらさや悩みが救われた」と感じているファンは、「犠牲者に共感しやすい立場にあり、惨事ストレスの被害にさらされやすい」と指摘。「つらさが受け止めきれない場合は、親しい人に気持ちを話したり、電話相談を利用したりすることも大切だ」と話している。

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