戦前の行政裁判所の記録、最高裁が保管 公立公文書館が目録公開へ

 明治憲法下で設置されていた特別裁判所の一つである「行政裁判所」の訴訟記録と判決の原本14件分が最高裁で保管されていたことが3日、関係者への取材で分かった。東京高裁に32件分の記録があることも判明。最高裁はすでに14件分を国立公文書館に移管した。国立公文書館は、内容を精査した上で、早ければ年度内にも目録を一般公開する。記録が公開されれば、当時の審理過程を知る貴重な資料となりそうだ。

 明治23年に創設された行政裁判所では、国民が行政処分の取り消しなどを求める行政事件のみを審理。昭和22年に特別裁判所の設置を禁じた日本国憲法が施行されたのに伴い、廃止された。判決はすでに全て書籍として刊行されているが、訴訟記録の保管状況については、これまで明らかになっていなかった。

 最高裁や国立公文書館によると、最高裁で保管されていたのは、行政裁判所で扱われた14事件分の記録と判決。各事件の訴訟記録1冊ずつに判決原本がとじられた形で一部は表紙に「行政裁判所」と書かれていた。

 訴えの内容は、士族などに支払われた給金である「家禄」を請求した訴訟や、税務訴訟、選挙訴訟など。訴訟を起こした時期に応じて付けられる事件番号は、明治37年から昭和22年までのものがあった。

 裁判所関係者は「最高裁で保管していた経緯は不明だが、きちんと保存できる場所に持っていてもらうことにした」としている。

 最高裁は昨年12月中旬に文書を国立公文書館に渡した。目録は早ければ年度内にも公開されるが、文書の中身は内容に応じて「公開」「要審査」「非公開」などに区分されるため、どこまで公開されるかは未定だ。

 また、東京高裁では32事件分の記録が保管されていた。うち22事件が家禄に関する訴訟、6事件が工事費受益者負担金訴訟。事件番号は明治42年から昭和14年までのものがあった。

 行政裁判所をめぐっては、東京高裁に文書が引き継がれた後、大部分が廃棄・焼却されたとの指摘もあるが、高裁は「事実を確認する資料が存在しないので分からない」としている。

 高裁によると、行政裁判所の文書も現行の民事訴訟法に基づいて閲覧を請求することが可能だが、「非常に古い記録なので、閲覧に耐えうる状況か確認する必要がある」としている。

 塚原英治・青山学院大教授(司法制度)は「戦前の判例についての事実に基づく研究は進んでおらず、当時の行政訴訟のあり方を知ることのできる貴重な資料だ。現在でも、重要な訴訟記録も大半は捨てられており、記録保存の意義を伝える資料にもなる」としている。(滝口亜希)

 ■塚原英治・青山学院大教授(司法制度)の話「戦前の判例についての事実に基づく研究は進んでおらず、当時の行政訴訟のあり方を知ることのできる貴重な資料だ。現在でも、重要な訴訟記録も大半は捨てられており、記録保存の意義を伝える資料にもなる」

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