京アニ放火発生から半月後の実名公表、京都府警が理解求める

 京都アニメーションの放火殺人事件は、京都府警が事件から半月後の2日、亡くなった35人のうち10人について身元を公表するという異例の対応となった。京都府警の西山亮二捜査1課長は「身元特定に時間を要したことに加え、凄惨(せいさん)な事件で関係者の精神的ショックが極めて大きい。ご遺族ら関係者が死を受け入れるまでに時間がかかった」としており、遺族や関係者への配慮を重ねた結果だ。

 西山捜査1課長は記者への説明で、遺族に「(匿名だと)臆測が流れたり、誤った事実が流れ、亡くなった方の名誉が傷ついたりする」と丁寧に理解を求めてきたことを明らかにした。

 その上で、葬儀を終えており、遺族の了承を得られた10人の公表に至ったという。残る25人は「現段階で了承が得られていない」として見送ったが、引き続き実名公表への理解を求めていく意向を示した。

 府警は今回の事件で、「遺族や被害者の理解を得る」ことを重視。西山捜査1課長は実名公表を了承した遺族についても「重大事件ということでやむなく了承した人がほとんど」と指摘、遺族らへの配慮を訴えた。今回公表した10人も、遺族感情も踏まえ、死因や現場での発見場所などは明らかにしなかった。

 府警は、放火事件としては平成以降、最悪の犠牲者を出した事件を受け、発生直後から100人態勢の「被害者支援班」を発足。捜査本部の70~80人も支援班に加えるなど異例の態勢を敷いた。

 その上で、匿名での発表を要望する会社側と、発表時期や発表方法を協議するとともに、遺族からは実名報道の可否などの要望を詳しく聞いてきた。府警によると、警察の被害者支援で、ここまで詳細に遺族の意向を取りまとめるのは過去に例がないという。

 少年事件でわが子の命を奪われた遺族らでつくる「少年犯罪被害当事者の会」の武るり子代表は「近年はインターネットの普及もあり、実名報道のマイナス面ばかりが強調されてしまっている。しかし、遺族も実名報道を通じて、同じ境遇にある他の遺族たちとつながることができる。『報道されない被害』があることも知ってほしい」と指摘する。

 服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は「犠牲者がどのような人生を歩んできたかを報じることは故人をしのぶ上でも大切だ」と強調。ただ、家族の命を突然奪われ、悲しみに暮れる遺族が、匿名の報道を望むのは自然であり、「遺族を含めた被害者は精神的なつらさを抱えている。取材を通して傷付けることがないよう、報道機関同士で取材者の数を限定するなどのルールを設定し、配慮することが必要」と、メディアにも慎重な取材を求めた。

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