京アニ放火 バケツに向きしゃがむ男、叫び声と同時に炎・煙…発生時の第1スタジオは 

 アニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ、本社・京都府宇治市)の放火殺人事件。現場となった第1スタジオ(京都市伏見区)には発生時、20~60代の社員ら71人がいた。激しい炎と真っ黒な煙が社員らを襲ったのは、ちょうどスタジオ内が慌ただしさを増す朝の時間帯だった。事件は8月1日で2週間。被害の実態を解明するため捜査が続く中、脱出した社員の証言や京都府警、市消防本部、会社などへの取材で当時の様子が次第に明らかになってきた。

 「うわっ」。男性社員の声がスタジオ1階に響くと同時に炎は一気に燃え広がった。

 消防への一報は7月18日午前10時32分。スタジオから約100メートル離れた京阪六地蔵駅に駆け込んだ京アニ社員からの119番だった。その内容は通常の火災通報とは全く様相が異なっていた。

 「玄関の自動ドアの外でバケツに向かってしゃがみこんでいる男がいた」

 「ガソリンの臭いがする。男が火をつけた」

 この日、第1スタジオではいつも通り午前9時から業務が始まっていた。午前10時過ぎから11時ごろは普段から最も人の出入りが多く、鉄骨3階建ての瀟洒(しょうしゃ)な建物内は「わちゃわちゃした」(脱出した社員)状態になっているという。

 京アニの代理人によると、1階の正面出入り口にはシャッターがあったが、通常、業務時間帯は開けられており、自動のガラス扉から誰でも出入りすることができた。

 青葉真司容疑者(41)は玄関近くで、携行缶から十数リットルのガソリンを2個のバケツに移し替えたとみられる。そして自動扉から1階に侵入すると、いきなり「死ね」といいながら、バケツのガソリンをらせん階段の近くにまいたが、直接浴びた社員もいたという。その後、簡易ライターで火をつけたとみられる。

 1階では当時、コンテンツ制作部のスタッフら15人前後がデスク業務を行っていた。フロアには、パソコン机やスキャナーなどが備えられ、音声収録室もあった。外に逃げ出した人も含め、ここで4人が死亡した。

   ×  ×

 爆音から10秒前後で、真っ黒な煙は吹き抜けのらせん階段を伝って2、3階に広がった。

 2階は主に原画、動画、背景画、キャラクター担当の4チーム、約30人が働いていた。このフロアでは11人の死亡が確認されている。ベランダから飛び降り、負傷しながらも助かった人もいた。

 3階ではアニメーションの作画チームと、ベテランのアニメーターチームが作業。奥には畳の敷かれた作業場やイートインスペース、台所、会議室などがあった。監督が一番多くいるフロアでもあった。

 最も多い20人の死亡が確認されたのはこの階だ。犠牲者は全員3階から屋上につながる階段で見つかった。激しい炎や煙から逃れようとして、逃げ切れなかったとみられる。折り重なって倒れていたため、発見直後は消防の人数確認さえ難航した。

 屋上にはベンチがあり、普段から社員たちは弁当を食べるなど憩いの場として使っていたという。屋上に出る扉は内側から開けられる状態だったが、瞬く間に充満した真っ黒な煙で視界が遮られ、空気より軽い一酸化炭素が一気に充満するなか、どこまで扉のハンドル操作などが可能だっただろうか。

 各フロアには消火器が備えられ、らせん階段には火災時に煙の広がりを防ぐ防煙垂壁もあった。防火訓練も行われていた。京都市消防局は京アニの防火対策は適切だったと指摘する。しかし、脱出した社員は「今回の火災は訓練のレベルをはるかに超えていた」と振り返った。

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