京アニ放火 特定難航、遺族に配慮 発生1週間も身元公表至らず

 「京都アニメーション」の放火事件は25日で発生から1週間となるが、犠牲者らの身元の公表には至っていない。火災によって損傷の激しい遺体も多く、身元の特定に時間を要した上、被害者家族らの心情に配慮し、京都府警が公表の時期や方法の検討を重ねているためだ。府警幹部は「被害者に寄り添いたい」と強調。死亡した34人全員のDNA型鑑定を実施し、慎重に身元特定を進め、被害者家族や京都アニメーションと公表方法についても協議している。

 事件では、鉄筋コンクリート3階建て延べ約690平方メートルが全焼し、34人が死亡。司法解剖の結果、犠牲者の大半は焼死だった。

 一般的に、警察が遺体の身元を調べる方法には、顔や手術痕などの身体的特徴の確認▽指紋の照合▽歯の特徴と治療記録との照合▽DNA型鑑定-などがある。ただ、今回の事件では遺体の損傷が激しく、関係者が対面しても分からない場合も多いという。

 また、1カ所で多くの人が犠牲となった上、年齢層が20~30代に集中。府警幹部は「間違いがあればとんでもないこと」と、親族からDNA試料の提供を受けるなどして、慎重な確認作業を続けている。

 損傷が激しい遺体が多い事件では、現場の遺留品やDNA型鑑定など、複数の情報を総合して身元の特定作業が進められるため時間を要したケースはあった。

 平成29年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の切断遺体が見つかった事件では、遺体の腐敗が進んでおり、身元の確認が難航。警視庁は室内から押収した所持品に加え、アパート付近で途絶えた携帯電話の位置情報を手がかりに、被害者の身元情報を割り出した。

 そのうえで、事件に巻き込まれた可能性がある行方不明者の親族から提供された試料を基に、遺体のDNA型鑑定を実施。警視庁が9人全員の身元を発表したのは、事件発覚から約10日後のことだった。

 被害者支援に詳しい常磐大の諸沢英道元学長は「多くの犠牲者がいる中で人定のミスがあれば、遺族は二重三重に苦しむ。慎重に身元の特定を進めるのは当然」との見解を示す。

 府警はこれまでに、DNA型鑑定に加え、所持品や遺体の発見場所などの情報から大半の犠牲者の身元を特定。家族らには捜査状況などと合わせて個別に説明しており、23日からは遺体の引き渡しも始めた。

 ただ、中には実名などの公表を望まない人もいる。公表時期をめぐっても、身元が特定した段階ですぐに公表してほしいという人もいれば、全員まとめて発表してほしいという人もいるといい、府警は京都アニメーション側とも協議しながら、公表方法などについて検討している。

 諸沢さんは、被害者らの意向を最も尊重すべきだとしつつ、「今後、継続的な被害者支援が行われることになる。公表が遅れれば支援の輪が広がりづらく、適正にサポートが行われているかのチェックも難しくなるのではないか」とも話している。

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