遮断機上がった踏切に作業車が…あわや大惨事の原因は?

【衝撃事件の核心】

 警報音が鳴りやみ、遮断機も上がった。何の疑いも持たずにタクシーが踏切を渡ろうとしたその瞬間-。大阪市住吉区の南海電鉄高野線の踏切で5月の深夜、列車とタクシーが衝突する事故が発生。列車は乗客を運ぶ営業用でなく、作業用だったため速度が遅く、運転手は軽傷で済み、ほかにけが人もなかった。一歩間違えれば大惨事となっていた事故はなぜ起きたのか。

■いるはずのない列車が…

 大阪市住吉区沢之町の住宅街を通る府道、通称「あべの筋」。5月23日午前1時45分ごろ、この道を走行していたタクシーが、遮断機の下りた踏切の前で停車した。すでに終電は終わっていたが、そのときは設備のメンテナンスなどをするための作業列車が近づいていた。

 しばらくして遮断機が上がった。男性運転手(68)がいつものように線路を渡ろうとしたところ、突然右手から作業列車が迫ってきた。

 そのまま衝突し、運転席のドアは大破。幸いなことに運転手は首などに軽傷を負うにとどまった。乗客もおらず、作業列車に乗っていた作業員2人もけがはなかった。大阪府警は業務上過失傷害の疑いもあるとみて捜査している。

■電圧上がり“誤解”

 なぜ、列車が通過する前に遮断機が上がったのか。

 南海電鉄によると、線路には常に電気が流れ、電圧がかかっており、踏切は線路とつながった回路で電圧を自動的に感知している。

 旅客を乗せている列車が線路の上を通った際は、車輪や車軸に電気が流れるため線路の電圧が低下。踏切はこれにより電車が近づいたことを把握しているという。電圧が基準値を下回れば踏切は遮断機を下ろしたり警報音を鳴らしたりし、電車が踏切を離れて電圧が再び基準値を上回れば警報音を止めて遮断機を上げる、という仕組みだ。

 しかし、踏切近くで長時間止まって作業することがある作業列車の場合、同じような構造にすると遮断機が下りたままになってしまう。このため「軌道短絡装置」という線路の電圧をコントロールする機器を搭載。踏切を通過するときだけ線路の電圧を下げ、踏切を作動させているという。

 事故当時も、作業員はこの機器を使用。いったんは遮断機が下がっていることから、当初は正常に作動していたものの、その後に何らかの不具合が生じて電圧が上がり、踏切側が「列車は通過した」と“誤認”したとみられている。

■同じタイプの装置も…

 不具合の原因は特定されていないが、軌道短絡装置自体に問題があった可能性も指摘されている。

 事故があった踏切の線路の場合、列車が通っていない状態の電圧は約300ミリボルト。これが106ミリボルト以下になると遮断機が下りる設定になっていた。南海の担当者は「乗客が乗る営業用の電車などでは10ミリボルト以下になることも珍しくない」という。

 だが事故後、南海が現場の踏切に今回事故を起こした作業列車を走らせ、軌道短絡装置を作動させたところ、電圧は122ミリボルトまでしか下がらなかった。これを受け、南海は同じタイプの別の軌道短絡装置でも同様の調査を実施。その結果、106ミリボルトは下回ったものの、その下げ幅はかなり小さかったことが判明した。「(下げ幅に)余裕がなければ、わずかの劣化でも危なくなってしまう」と担当者。南海は軌道短絡装置を全て別タイプに切り替えるとしている。

■不具合、過去にも

 安全設備の不具合による鉄道事故は過去にも起きている。

 大阪府貝塚市の水間鉄道の踏切では平成25年8月、電車(2両編成)と乗用車が衝突。乗用車の男性が軽傷を負った。

 踏切は事故発生時、電気系統のトラブルにより遮断機が下りず、警報音も鳴らない状態だった。同鉄道では以前から同様の不具合があったにもかかわらず放置していたとして、関係者らが業務上過失致傷容疑で書類送検されている。

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