大阪北部地震1年 電車内で地震、どうする 停電、閉じ込め…常に心構えを

 「あのとき以来、地震に対する意識が変わりました」。1年前に大阪北部地震を経験した関西大教授の林能成(よしなり)さん(50)は振り返る。

 昨年6月18日午前7時58分、林さんは大阪府茨木市の自宅から同府高槻市内にあるキャンパスに通勤するため、JR東海道線の快速電車に乗っていた。

 最初に感じたのは大きな揺れ。一瞬、駅に到着したのかと思った。だが、乗客の携帯電話から一斉に緊急地震速報が鳴り、地震が起きたことを悟った。

 電車は停電。車内は薄暗く、蒸し暑い。林さんはこの間、携帯電話で情報収集したり家族に安否を伝えたりして過ごした。結局、電車から出られたのは約1時間半後。はしごを使って線路上に降り、高槻駅まで数百メートル歩いた。林さん自身、地震防災の研究者だが、地震による電車内の閉じ込めは初めての経験だった。

 国土交通省によると、大阪北部地震の影響で駅間で停止した電車は、JRや大手私鉄で計234本にのぼる。多くの電車は数時間立ち往生し、乗客らが閉じ込められた。

 林さんが乗車した電車は幸い、乗客が少なく大部分が座席に座れており、車内で目立った混乱は見られなかった。林さんは「もし満員電車だったら、もう少し地震の規模が大きかったら…。一つでも条件が違っていたら大変なことになっていただろう」と語る。

 各鉄道会社によると、他の電車では長時間の閉じ込めで体調不良を訴えて搬送される乗客もいた。トイレがない車両では車掌室を目隠しし、新聞紙やポリ袋などで作った即席のトイレに用を足す場面も見られた。

 この教訓を踏まえ、各社の対策も進む。JR西日本は京阪神を走る全編成の電車に簡易トイレを配備したほか、迅速に運転再開の手続きができるよう、乗務員の電話番号を一括登録するスマートフォンアプリを導入するなどした。

 一方で、林さんは「乗客側の意識の見直しも必要だ」と指摘する。例えば、通勤通学のあり方だ。「いつ、何が起きるかわからない通勤通学路は、なるべく距離を縮めたほうがいい。私自身も北部地震後、子供たちの進学先はなるべく自宅の近くで、と考えるようになりました」

 通勤通学時間帯と重なった大阪北部地震。浮かび上がった課題は交通網だけではない。

 国交省によると、地震の影響で約6万3千台のエレベーターが停止し、乗客の閉じ込めは346台にのぼった。エレベーターには強い揺れがあると、安全のために自動的に停止する機能がある。その機能を解除する技術者が渋滞に巻き込まれて到着が遅れ、最大約5時間半閉じ込められた事案もあった。

 こうした事態を受け、日本エレベーター協会(東京)は今年4月、会員企業に対し、スムーズな技術者の現場到着を目指し、病院など優先的に技術者を派遣する施設をリスト化することなどを求めた。同協会の各支部では閉じ込め事案に対応する消防隊員らとの合同訓練なども行っている。

 ただ、近い将来に発生が見込まれる南海トラフ巨大地震では最大約2万3千人がエレベーターに閉じ込められるとされ、大規模な建物倒壊や津波による浸水被害も想定される。技術者の現場到着そのものが困難になる可能性もあるが、こうした事態への明確な対応指針がないのが現状だ。

 大阪市立大都市防災教育研究センターの三田村宗樹(むねき)教授は「南海トラフ巨大地震級の地震が起きれば、広域にわたり混乱し、公的機関の援助を得るにも時間がかかる。日ごろから一人一人が災害に対する心構えを整え、何か起きてもパニックを起こさずに周囲の人々と協力しながら冷静に行動する必要がある」と指摘している。

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