大阪北部地震1年 自宅直せない高齢者ら「支援を」

 最大震度6弱を観測した大阪北部地震から1年がたった18日、被災地の大阪府高槻市や同府茨木市にはなお、ブルーシートで屋根を覆った住宅が点在している。背景には、高齢世帯など経済的に苦しい人たちが修復を断念している実態がある。被災住宅の99%を占める一部損壊は国の支援対象ではなく、専門家は、建物の損壊状況ではなく困窮度に応じた支援の必要性を訴える。(張英壽)

 「部屋の中は隙間だらけ。建物も地震でずれたが、直すには莫大(ばくだい)な費用がかかり、家一軒買えるくらいだ。子供は戻らないし、修理する気はない」

 淀川に近い高槻市南部の唐崎地区。約400年続く旧家の当主で1人暮らしの元銀行員の男性(85)は、こうため息をついた。

 男性は自宅を売却することを決心。今秋、次男が暮らす茨木市内のマンションに身を寄せる予定という。

 唐崎地区では、ブルーシートで覆われた住宅が残る一方、あちこちで建て替え工事も行われている。男性は「年寄りだけで住んでいる世帯は困っているが、収入のある息子と一緒に住む2世帯住宅などは、家を直している」と説明した。

 同地区で専門学校に通う娘と2人暮らしという無職女性(63)は亡くなった夫の遺族年金で暮らしている。自宅は屋根瓦が損傷し、壁にひびが入るなどしたが「完全に直すには5、600万円かかるといわれたが、そんな額は払えない。最低限の修理だけにする」といい、「法律による支援が必要」と訴えた。

 被災地に今も点在するブルーシートが張られた住宅は古い木造家屋に目立ち、修復工事費用を払えない高齢者らの世帯が張り替えで対応しているケースも多い。茨木市の福岡洋一市長はこうした現状を認めた上で、「行政の限界を感じている」と話す。

 一方、瓦屋根の修理業者は、今も被災地の需要に対応しきれていない。瓦以外のスレートぶきなどの住宅が増えるなどし、もともと瓦施工業者自体が減少。昨年6月の地震に続いて9月には台風21号にも見舞われ、いまだに業者不足が解消されない状況だ。

 瓦業者でつくる大阪府瓦商工業協同組合の北支部長で、「瓦(かわら)柾(まさ)」(大阪府寝屋川市)の正木忠信社長は「まだ修復工事のニーズに追いついていない。他府県からの応援もあり、一般の住宅については来年にはほとんど終えられるだろうが、修理費の相場が20~30%上がっている」と説明。修理費の高騰は、貧困世帯のさらなる負担となっている。

 国の支援対象外の一部損壊住宅のため、高槻、茨木両市は昨年、修復支援金(高槻市最大5万円、茨木市同20万円)を創設。瓦の修理業者不足のため申請期限は今年3月末から今月28日までに延長されたが、再延長の予定はない。

 「大災害と法」などの著書がある津久井進弁護士は、一部損壊住宅が支援対象とならない被災者生活再建支援法について「建物の損壊度ではなく、生活に対するダメージに応じて支給できるようにしてはどうか」と提言。「失業したりけがをしたりしたことも要件に入れるほか、ほかの世代に比べて高齢者の生活再建に困難が伴うことも考慮したほうがよい。生活困窮の実態に応じてきめ細かい支援ができるようにすべきだ」と訴えている。

 ■国の被災者支援制度

 被災者生活再建支援法は全壊や大規模半壊などが対象で、住宅の被害程度に応じた基礎支援金と新築や補修など再建方法に応じた加算支援金を支給し、最大300万円、最低100万円。一方、災害救助法の住宅支援では、家が全壊して住宅を確保できない場合に1戸あたり平均561万円以内で仮設住宅を建設するほか、半壊や大規模半壊では58万4千円以内で応急修理する。いずれも一部損壊住宅は対象外。

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