川崎殺傷・岩崎容疑者、50代で暴発の背景 長年の引きこもり生活が影響か 模倣犯出現の危険も

 川崎市多摩区の路上で、私立カリタス小学校の児童ら20人を殺傷し、犯行後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)の特異性が注目されている。過去に起きた無差別殺傷事件と比べ、犯行時の年齢が高いのだ。一般的に体力が衰え、精神的にも落ち着くはずの50代で暴発した背景には、長年の引きこもり生活が影響しているとの見方もある。中高年の引きこもりが社会問題化するなか、専門家は模倣犯の登場を危惧する。

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 神奈川県警は5月31日深夜、カリタス小の女児1人の軽傷が新たに判明したと明らかにした。殺害された6年生の栗林華子さん(11)ら2人を含め、わずか十数秒で計20人を切りつけたことになる。事件の衝撃は収まらず、同小の学校再開は5日に延期された。

 「周囲を大勢巻き込むような犯行は、かなりエネルギーを要するので、若い年代が多い。岩崎容疑者がなぜこの時期に犯行に走ったのか。自身の中に積もった不満や鬱憤か、決定的な引き金になった出来事があったのか。いずれの可能性もあるが、まだはっきりしたことはわからない」

 事件の特異性について、筑波大学人間系の原田隆之教授(犯罪心理学)はこう話す。

 過去の無差別殺傷事件と比べると、岩崎容疑者の年齢の高さは際立つ。

 2001年6月に大阪教育大付属池田小で、児童8人を殺害した宅間守元死刑囚は事件当時37歳。08年3月に茨城県土浦市のJR荒川沖駅で、男女8人が刺され1人が死亡した事件の金川真大(まさひろ)元死刑囚は24歳、同年6月に東京・秋葉原で7人を殺害、10人に重軽傷を負わせた加藤智大(ともひろ)死刑囚は25歳だった。

 岩崎容疑者はなぜ、50歳を過ぎてから凶行に及んだのか。

 ヒガノクリニック院長で精神科医の日向野春総氏は「複数人を無差別に襲う犯行はかなりの体力を必要とする。50代という年齢で車を使わず、凶器として複数の包丁を選ぶのは奇妙に映る」と話し、こう分析する。

 「岩崎容疑者が以前から同居する伯父夫婦とのコミュニケーションすら絶っていたことを考えると、コミュニケーションを取らないうちに自らの体力などを正しく評価できなくなり、本人の頭の中と実際の行動が乖離したのではないか」

 岩崎容疑者の生活状況について、川崎市は29日、親族から「長期間就労しておらず、引きこもり傾向にある」などと相談を受けていたと明らかにしている。

 「伯父夫婦は、介護ヘルパーが家に入ることについて岩崎容疑者の反応を気にかけ相談し、今年1月に手紙を差し出したというが、自らの殻に閉じ籠もる人にとって、手紙は『自らの世界に突如入り込んだ刃物』のようなものだ。急に自分の居場所が外部から干渉されたことによって逆上した可能性も高い」と日向野氏は指摘する。

 岩崎容疑者の境遇は決して特別ではない。内閣府は3月、半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せず、自宅にいる40~64歳の引きこもりが全国で61万3000人いるとの推計値を公表した。

 日向野氏は「私が担当する患者にも岩崎容疑者の考えに近い人がいて、事件後に一度クリニックに来てもらって事件について話し合った。事件が連日報じられることで、(岩崎容疑者と)近い状況に身を置く人々が、模倣犯となる引き金になりかねない」と警鐘を鳴らした。

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