悪ふざけでは済まされない ロープや針金…路上での卑劣な犯罪

 【衝撃事件の核心】

 「ニュースになるほど大事になるとは思いませんでした」。大阪府寝屋川市の路上にロープを張り、ミニバイクで通行中の女性(77)を転倒、負傷させたとして今月2日、殺人未遂容疑などで大阪府警に逮捕された少年はこう供述した。路上にロープや針金などを張る危険で卑劣な行為は後を絶たない。専門家は、過激な動画に注目が集まる最近の風潮が影響している可能性を指摘。「直接手を下さないため、心理的ハードルが低い犯罪形態だ」と話している。

 ■「楽しもうと…」

 4月29日未明、寝屋川市の路上。新聞配達のアルバイトをしている女性は職場に向かうため、ミニバイクを走らせていた。暗い夜道だが、普段は障害物のない直線道路。ところが、突如強い衝撃を受けてバイクごと転倒。地面に体を打ち付け、左脚を骨折した。

 府警によると、現場には長さ約20メートルのロープが張られていた。黄色と黒色の「トラロープ」と呼ばれるナイロン製で、本来は道路脇のスーパーの駐車場を営業時間外に封鎖するためのものだった。普段は近くの鉄柱に結ばれているが、このときは向かいの理髪店のサインポールとの間に、大人の膝くらいの高さに張られていた。

 府警が現場周辺の防犯カメラを確認すると、映っていたのはロープを張るような動きをする不審な2人組の姿。同市内に住む私立高校2年の少年2人=いずれも(16)=を殺人未遂と往来妨害容疑で逮捕した。

 少年らは調べに「大事になるとは思わなかった」とする一方、「転んだ人をみて楽しもうと思っていた」と供述。実際、現場近くで女性が転倒する様子を見ていたという。

 ■過去に死亡例も

 「ロープの高さや位置によっては死に至る危険もあった。『悪ふざけでした』では済まされない」。少年らは「殺すつもりはなかった」と殺意を否認しているが、府警幹部はこう語気を強める。

 同様の事件は全国で相次いでおり、過去には死亡者が出たケースもある。

 大阪府大東市では4月13日夜、遊歩道の出入り口に張られた針金で、自転車の50代男性が胸や指に軽傷を負う事件が発生。府警は同月19日、傷害などの疑いで会社員の40代の男を逮捕した。男は「遊歩道で自転車と何度もぶつかりそうになり、こらしめてやろうと思った」と動機を語った。

 昨年5月には川崎市川崎区の県道にロープを張り、バイクで走行中の男性にけがをさせたとして、神奈川県警が殺人未遂の疑いで、無職の50代の男を逮捕。昭和59年には、東京都葛飾区の道路に張られたロープで転倒したオートバイの男子高校生=当時(17)=が死亡している。

 ■「罪悪感が薄く」

 なぜ、こうした犯罪が続くのか。犯罪者の心理に詳しい新潟青陵大大学院の碓井真(ま)史(ふみ)教授(社会心理学)は「顔を見られたり反撃されたりする恐れが少なく、直接暴行を加えるのに比べて罪悪感を抱きにくく、心理的ハードルの低い犯行形態だ」と解説する。

 最近はSNSや動画サイトに危険な行為を撮影した映像が投稿されることも多く、若い世代を中心に人気を集めている。碓井教授は「こうした動画に影響され、『ロープを張ったらどうなるか?』という単純な発想で実行してしまう可能性はある」という。

 寝屋川市の事件で逮捕された少年らは、動画の撮影こそしていなかったが、転倒する様子を笑いながら眺めていたという。ある捜査幹部は怒りを込めてこう指摘した。「若者がツイッターやユーチューブなどに、危険な動画を投稿するような軽いノリだったのではないか」

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