「即位の礼」の恩赦10月にも、軽微犯罪限定・規模縮小か

 天皇陛下の即位に伴い、政府は、10月22日の「即位礼正殿の儀」(即位の礼)に合わせて恩赦を実施する方向で検討を本格化させる。国家の慶弔時に多い一斉実施では、行われれば平成5年の陛下と皇后さまのご結婚時以来、26年ぶり。昭和から平成への代替わりに伴って行われた恩赦にならい、軽微な犯罪に限定するとみられる。ただ、過去には大量の選挙違反者の公民権回復が「政治恩赦」と批判されており、規模は平成の恩赦と比べて縮小されることになりそうだ。

政治恩赦と批判

 恩赦は刑事裁判で決まった刑罰を政府が消滅・軽減させたり、有罪で停止した公民権などの資格を回復したりする制度。有罪判決を無効にして釈放する「大赦」「特赦」のほか、「減刑」「刑の執行の免除」、公選法違反で失われた公民権などの資格を回復させる「復権」の5種類がある。

 昭和から平成への代替わりでは、昭和天皇の「大喪の礼」が行われた平成元年2月と、「即位の礼」が行われた2年11月の2度にわたって計1267万人規模で実施された。ただ、殺人や傷害といった被害者のいる事件の受刑者が釈放されたケースはなく、選挙違反者や道交法違反者などの復権が99%を占めた。

 今回は譲位に伴う代替わりで大喪の礼はないことなどから1度に行われ、軽微な犯罪が対象で規模も縮小されるとみられる。背景には、即位の礼の際の恩赦で、同じ年の衆院選に絡んで罰金刑を受けた選挙違反者が多く救済されたことなどで「政治恩赦」と批判されたことに加え、犯罪被害者感情への配慮もある。

 12年に犯罪被害者保護法、16年に犯罪被害者基本法が成立し、国民の間で被害者保護の意識が高まった。21年には国民が刑事裁判に参加する裁判員制度が導入されており、国民が関わった判断を覆すことへの反発も懸念されるからだ。

 元法務省関東地方更生保護委員会委員で、浦和大非常勤講師の高池俊子氏は「被害者・遺族がいる殺人や傷害事件などの受刑者を釈放する恩赦は今回も考えにくい。特定の被害者がいない比較的軽微な犯罪の刑罰軽減や、(選挙違反者などの)復権が対象になるのではないか」と推測。「恩赦には刑事司法制度が不安定な国で、不公平な刑罰を受けた受刑者らを救済する意義もある。日本のように比較的安定した制度の国では、より慎重に行うべきだ」と話している。

国の転換期にも

 国家の慶弔時に一斉に行われる恩赦は日本国憲法下で過去10回あり、皇室関連の行事だけでなく、国の転換期にも行われた。

 昭和27年、日本が主権を回復したサンフランシスコ講和条約発効を受けて実施された恩赦では、有罪を無効にする「大赦」が120の罪を対象に行われ、釈放は5千人を超えた。死刑を無期懲役に減刑したケースもあった。

 31年の国連加盟時は、公選法などの違反者が大半だったが、29年に表面化した造船疑獄での政治資金規正法違反罪で在宅起訴されたのちの首相、佐藤栄作氏も免訴に。47年の沖縄本土復帰の恩赦は、米国統治中の法体系下で科された刑罰を救済する意味もあった。

 43年には「明治100年記念」との理由で実施したが、国会で「関係があるのか」と批判された。この恩赦を決めたのは佐藤内閣だった。

 【恩赦】裁判によらずに刑罰権や裁判の効力を消滅させたり、軽減したりする制度。内閣が決定し、天皇が国事行為として認証する。内閣が罪や刑の種類、基準日などを定めて一律に実施する「政令恩赦」と、個別の受刑者らから出願を受けて行われる「個別恩赦」の2種類。国家の慶弔時には、受刑者らも喜びを分かちあったり、冥福を祈ったりできるようにする目的で、政令恩赦と特例的な「特別基準恩赦」(個別恩赦の一つ)のいずれか、または両方が行われる。慶弔時以外の個別恩赦は「常時恩赦」と呼ばれている。

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