特殊詐欺グループが海外に拠点を置く理由 通信傍受、電話番号…中国や東南アジア「裏組織」の影も

 タイやフィリピンの拠点から日本に特殊詐欺の電話をかけていた「かけ子」たちが現地警察に一網打尽にされた映像は衝撃的だったが、逆に日本を拠点に中国に詐欺電話をかけるグループもいた。詐欺グループが海外に「コールセンター」を置く背景には、法律や技術の裏をかく狙いや、「裏組織」の存在もありそうだ。

 タイ中部パタヤの一軒家で逮捕された日本人の男15人は、日本国内の高齢者らに詐欺の電話をかける「かけ子」グループとみられる。うち9人はタイ入りする前に、フィリピン中部のセブに長期滞在していたことがタイ警察の捜査で分かった。

 逆のパターンもある。警視庁組織犯罪対策2課が入管難民法違反(虚偽申請)の疑いで再逮捕した台湾籍の男(28)ら男女10人は、甲府市や山梨県甲州市、千葉県東金市の住宅やビルから中国本土に特殊詐欺の電話をかけていたとされる。

 「海外に拠点を移すケースは4~5年ぐらい前から出てきた」と解説するのは詐欺被害や悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏だ。

 「以前は少人数で、車内や民宿、別荘、ホテルなどから電話することが多かったが、通信傍受法の改正などで取り締まりが強化されたことも背景にあるだろう。中国も同様の傾向で、東南アジアにシフトしてきている」

 通信傍受法は、当初は薬物・銃器犯罪、組織的殺人、集団密航が対象だったが、16年末から組織性が疑われる窃盗や詐欺などでも電話の会話やメールなどを傍受できるようになった。

 パタヤの拠点からは詐欺の手順を示したマニュアルや約50台のIP電話機などが押収された。IP電話は、一般加入電話網回線の一部あるいは全部をインターネット網で代替するため通話料金は大幅に安くなるという。

 「被害者に送りつけたSMS(ショートメッセージサービス)に記載された電話番号や、被害者電話をかける際の発信者番号を『03』や『06』など国内局番にすることもでき、怪しまれにくい事情もある」と多田氏。

 多田氏自身、これまでの取材で特殊詐欺グループとみられる複数の相手と通話した際、「違和感」を覚えたことがあると振り返る。

 「かけ子は、『ボスは中国人で、自分は電話をかけているだけだ』と言っていた。『03』発信だったが声は遠く、海外のように感じた。後ろから外国人らしき声がしたり、ラジオから東南アジアの音楽が流れているようだった」

 東南アジアが選ばれたのは、「時差が小さいので電話をかけやすい。観光地ならば、集団で入国しても違和感がない」(多田氏)という事情もあるようだ。中でもパタヤは、日本人や欧米人も多く訪れる観光地で、拠点は富裕層向けの住宅が集まる一角だった。

 「警察もなかなか手を出せないセキュリティー万全のなかでやっていたようだ。高級住宅街を拠点とできたのは、不動産や、電話など備品の貸借に特化した『道具屋』『ハコ屋』が海外にも存在するのだろう。中国や東南アジアの暴力団など裏組織が絡んでいるかもしれない」と多田氏はみる。

 氷山の一角か。

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