2億円分のルイ・ヴィトンに“ミッキーハウス”…着服した大金で爆買い、実態解明は

【衝撃事件の核心】

 ミッキーマウスの形を外壁にあしらった自宅、2億円分のルイ・ヴィトン…。女が15年にわたって会社から着服したとみられる金で行った「爆買い」だ。兵庫県三木市の土木建築会社「神和商事」で平成30年10月、元経理担当役員の北村緑被告(56)が多額の会社資金を着服したとして業務上横領容疑で逮捕、起訴された。同社の神(かん)行(ぎょう)武彦社長(59)は「北村被告を信用しきっていた」と後悔し、「被害総額は5億円以上だ」という。12月13日の初公判では検察側から「着服金をブランド品購入や旅行にあてていた」と暴露されたが、北村被告は不敵な笑みを浮かべるなど反省している様子はなかった。(土屋宏剛)

 ■自己破産し逃亡

 不正が発覚したのは一昨年12月。新たに経理担当に加わった従業員が帳簿類を確認した際、食事や日用品の購入など私的な支払いが会社経費で処理されている形跡を発見した。北村被告が経理を一人で担当していたことから着服疑惑が浮上した。

 神行社長が北村被告に問いただしたところあっさりと着服を認めたという。北村被告は当初、「着服額は3千万円程度で全額必ず返済する」と釈明していた。ところが、帳簿類をさかのぼると不審な領収書や使途不明金が次々と発見され、着服額は大きく膨らんだ。

 会社側は昨年2月に北村被告を役員から解任した上でさらに調査を進めたが、北村被告は裁判所に自己破産を申請。1円も返済しないまま会社と連絡を断ち、行方をくらませた。同社は着服額が計約5億円に上るとして、昨年9月に刑事告訴に踏み切った。

 ■大胆な手口で着服

 北村被告は神和商事に入社する前は別の建設会社で経理を担当していた。北村被告の夫と神行社長が親交があり、平成11年に神和商事に入社した。

 入社当時は神行社長の妻が経理を担当していたが、病気で仕事が困難になったため北村被告が経理を任されるようになった。それまで経理関連書類や帳簿類は全て手書きで管理されていたが、北村被告の提案でパソコンの会計ソフトで管理するようになったという。

 着服はこのころから始まった。当初は私的な飲食や日用品に会社経費を流用する程度だったが、社内の経理を一手に担当していたため次第にエスカレート。不正な経費精算は月平均100万円に上り、会社の小切手に自分勝手な金額を記入して金融機関で現金化したり、反りの合わない従業員のボーナスを減額して正規支給額との差額を着服したりするなど、手口は大胆になっていった。

 神行社長は「他の社員は会計ソフトの使い方すら分からない状況で、経理を正確に把握していたのは北村被告だけだった。妻が病気になり大変だった時期も文句を言わずにやってくれたため、信用しきっていた」と唇をかむ。

 横領は15年以上にわたり、手に入れた金の多くはブランド品の購入に使われていた。「どこにあんなに金があるのか…。ブランド品は偽物なのだろうか」。神行社長の長男で、同社役員の勇也さんは北村被告が毎月のように買い替えるブランドの時計や洋服、バッグなどの数々を不審に思っていたという。

 北村被告はブランド品の他にも兵庫県小野市に約4500万円の住宅を購入。ディズニーの人気キャラクターの「ミッキーマウス」が好きで、外壁などにミッキーの形をあしらい、玄関前にミッキーの像が何体も並んでいたことから、近隣住民の間では「ミッキーハウス」と呼ばれていた。この住宅は現在、神行社長が買い戻して管理している。

 会社経費で複数回旅行していたことも発覚。同行相手は夫ではなく10歳以上年下の男で、東京ディズニーランド(千葉県浦安市)などに旅行していた。北村被告は着服発覚後、夫とは離婚している。

 ■裁判で全容解明なるか

 北村被告は刑事告訴された後の昨年10月、神戸地検特別刑事部に同社の互助会の積立金計300万円を着服したとして業務上横領容疑で逮捕。さらに、同社の関連会社の資金約2550万円を着服した疑いで再逮捕され、その後に業務上横領の罪で起訴された。

 神戸地裁で12月13日に開かれた初公判で、北村被告は約9カ月ぶりに神行社長や従業員らの前に姿を見せたが、傍聴席に視線を向けることはなく、淡々と「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 初公判では、資金の出所は不明ながらも北村被告がフランスの高級ブランド「ルイ・ヴィトン」のバッグや時計など計約2億円分を購入していたことが明らかにされた。役員当時の北村被告の年収は1千万円ほどで、傍聴に訪れた社員らは「給料だけで大量のブランド品の購入は不可能。大半は会社資金だろう」と話した。

 初公判後、神戸地検特別刑事部は同社や関連会社からさらに計約7千万円を着服したとして追起訴し、総額約1億円の横領を裏付けて捜査を終結させた。次回公判からは追起訴分も合わせて審理されることになるが、裁判の中で事件の詳細がどこまで明らかになるかは不透明だ。

 神行社長は「初公判ではあまり反省しているようには見えなかった。自己破産を申請している以上、会社の資金も返ってこない。15年にもわたって会社や従業員を裏切り続けたことをどうにかして償ってほしい」と声を絞り出した。

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