西日本豪雨 土砂に埋もれた寺、離散した住民…地域とともに「立ち直る」

 中国・四国地方を中心に甚大な被害を出した西日本豪雨は、地域の結びつきをも奪う状況になっている。広島では、住民のほとんどが顔見知りという地域で、中心的な役割を担っていた寺が被災。岡山では、広範囲の浸水被害により地域の住民が一斉に避難し、コミュニティーの解消への懸念を示す声が上がる。このような状況の中、住民らは自分たちの地域を未来に残すため、再興を願っている。

 「時間です、終了です!」。15日午後、広島県坂町(さかちょう)小屋浦にある西昭(さいしょう)寺近くの道路。積もった土砂をスコップでかき出していたボランティアに、河野法誓(ほうせい)住職(38)がストップを掛けた。熱中症防止のため5分ごとに休憩を入れる。大粒の汗をかきながら、炎天下の作業が続いた。

「葬儀あげたかった」

 6日の夜は会議で広島市内にいた。猛烈な豪雨に気づき坂町に戻ろうとしたが、通行止めで動けない。7日朝、自転車で坂町に入ったが、すでに町は濁流に飲み込まれていた。西昭寺は1階部分に土砂が流れ込み、隣接する自宅も被災。本堂2階にあった本尊は無事だったが、袈裟(けさ)や門徒に関する重要な書類などが土砂に埋もれ、寺は機能しない状態になった。

 豪雨で多数の犠牲者を出した小屋浦地区。西昭寺でも複数の門徒が亡くなった。河野住職が「今一番辛いこと」と悔やむのは、そうした門徒の葬儀をあげられないことだ。小屋浦地区には約1800人が暮らす。たとえ門徒でなかったとしても大半が顔見知り。寺が主催するグラウンドゴルフ大会やそうめん流し、ゲーム大会といったイベントや会議などを通じ、老若男女問わず交流が深かった。「お世話になった方ばかりが犠牲になった。本当は私が葬儀をあげたかった」。河野住職はこう唇をかみ、「だが、この現状では」と肩を落とした。

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