西日本豪雨 タクシー会社が一時避難先に 浸水被害の真備町

 大規模な浸水に襲われた岡山県倉敷市真備(まび)町で、救助活動が続く中、避難所として住民を受け入れた地元企業がある。長年、地域で営業を続けてきたタクシー会社「日の丸タクシー」。社長の平井啓之さん(46)は事務所が水没する中で2階部分を、避難先として開放。住民約70人が身を寄せ、一命を取り留めた。

 「救助した住民を一時的に避難させてほしい」

 記録的な豪雨で堤防が決壊し、同社周辺の水位が約3メートルに達した7日昼ごろ。平井さんは、逃げ遅れた住民の救助を続ける岡山県警から要請を受けた。

 同社の事務所も1階部分は浸水。平井さんや社員、すでに身を寄せていた住民らが2階にいた。

 水位が急上昇し、自衛隊や県警の救助活動は難航。ボートで遠く離れた避難場所までの往復に時間がかかれば、救えるはずの命が濁流にのまれる。平井さんはすぐに2階を避難先として開放した。

 住民らは、同社の外階段に着けられたボートから2階に避難。約65畳のスペースに小学生から高齢者まで約70人が詰めかけ水も飲めずに過ごしたが、「この会社のおかげで命が救われた」と感謝した。

 しかし、その後も水位の上昇は止まらず、同社の屋上で待機していた自衛隊の判断で、ボートでの避難を開始。7日午後4時ごろから、けが人や高齢者、子供を優先して移動させ、平井さんが事務所を後にしたのは全員が避難を終えた9日未明だった。

 平井さんは「すさまじい状況の中で避難してくる人たちを拒む理由は何もない。みんな生きることに必死だった」と振り返る。

 同社は47年前に創業。豪雨でタクシー34台のうち22台が水没したが、難を免れたタクシーだけで営業を再開した。平井さんは「今は日々を乗り切るだけで大変だが、復興に向けて町を活気づけていくためには、人が戻ってきたときの受け皿が必要だ。タクシー会社として住民の足になることが使命。これからは交通の面で地域をサポートしていきたい」と意気込んでいる。

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