裁判費用、ネットで調達 日本初、目標額超える340万円 大阪のタトゥー医師法違反事件

 医師免許なしに客にタトゥー(入れ墨)を入れたとして医師法違反罪に問われ、1審で有罪判決を受けた被告が控訴審の裁判費用確保に向け、インターネット上で寄付を募る「クラウドファンディング(CF)」を実施し、締め切りの20日深夜までに目標額を上回る約340万円が寄せられた。弁護人によると、裁判費用をCFで集めるのは国内で初めて。弁護士の収入減が指摘される中、弁護活動の新たな切り札として注目されそうだ。(加藤園子)

 費用を募ったのは彫師、増田太(たい)輝(き)被告(30)。タトゥーの施術が「医業」にあたるかが争点となり、話題を呼んだ大阪地裁の公判で、無罪を主張する弁護側は「施術を医師に限定するのは表現の自由、職業選択の自由の侵害」と訴えた。しかし昨年9月の判決で「医師が行うのでなければ保健衛生上の危害が生じる恐れがある」として罰金15万円を言い渡され、控訴している。

 弁護団は大阪高裁での控訴審に向け、医師や憲法学者、入れ墨文化研究者のヒアリングなどを計画。特に医業の解釈をめぐる海外調査は100万円単位の費用がかかるため、1審段階では実施できなかった。

 主任弁護人を務める亀石倫子弁護士(43)は、最高裁が令状なしのGPS(衛星利用測位システム)捜査を違法とした裁判や、風営法違反罪に問われた元ダンスクラブ経営者の無罪が確定した裁判などを担当。亀石弁護士によると、こうした先例のない事案ほど費用がかさみ、一部を自費でまかなうことも少なくない。このため、考えついたのがCFだった。

 1審で有罪となった事件だけに「悪い印象を持たれないか」との懸念はあったが、裁判の社会的意義を分かりやすく解説するなどネットサイトの表現を工夫。SNS(会員制交流サイト)で発信し、タトゥーに関心の薄い層にも支援を求めた。支援に対する特典は「裁判の進(しん)捗(ちょく)状況を知らせるメール」や「控訴審の最終報告書」とした。

 300万円の目標金額に対し、3月1日の募集開始から4月20日午後11時59分の締め切りまでに、延べ222人から338万5500円が集まった。亀石弁護士は「想像以上の結果。多くの人が裁判の意義に共感してくれた」と喜ぶ。

 日本弁護士連合会などによると、弁護士数は過去10年間で約1・5倍に増加。弁護士1人当たりの収入は減少傾向にあるとの指摘もある。亀石弁護士は「公益的な裁判は手弁当で取り組むことが美徳とされたのは弁護士に経済的余裕のあった昔の話」と指摘。「今の若手弁護士は経済的基盤を確保するだけでも大変。CFは活動の支えになるのではないか」と話した。

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