庶民の人生の辛い部分に寄り添ってきた「浪花節」 浪曲師・玉川奈々福さん『浪花節で生きてみる!』

【BOOK】

 かつて大衆芸能の華だった浪曲は、昭和の高度成長の波とともにブームが去った。が、今、新しい世代のファンを増やしブームは再燃中だ。その牽引車のひとり、玉川奈々福さんが“浪花節的こころ”を啖呵と節を織り交ぜて唸り解く。 文・高山和久/写真・松井英幸

もっと広く知って

 --浪曲の本とは珍しい

 「浪曲はかつて浪花節(なにわぶし)と呼ばれましたが、今は浪曲という呼び方が一般的です。浪曲の文字情報は、例えば落語に比べてもとても少ないですね。だからこの世界に長く身を置いた者として定点観測的に書いておくべきだと思ったし、浪曲という芸能をもっと広く知ってもらいたいと思ったのです」

 --浪花節(浪曲)への思いが伝わります

 「浪花節はもともとは大道芸で、社会の底辺から生まれた芸能です。庶民の日々の暮らしは苦しく、痛い、寒い、辛い、悲しいといった人生の辛い部分をいっぱい抱えてました。そこに寄り添ってきたのが浪花節です。でも、高度成長期のあたりから多くの人が『人間の将来は明るい。みんな幸せになるのではないか』と夢をみるようになって辛かった過去を忘れ去り、それとともに浪花節も消えていったのです」

 --渾身のデビュー作。苦労はありましたか

 「浪花節の演題、尊敬する先人、師匠(二代目玉川福太郎)のことなどは筆が進んだのですが、自分のことは書きにくかったですね。私は毎年数回、小学校に行って浪曲を披露する機会があります。興味をもたない子供たちに『私は大学を出て就職して本をつくる仕事に就きましたが、いまは浪曲師なの』と自分のキャリアから入ります。すると子供たちの表情が少し変わります。“人生はうっかりしていると何が起こるかわからない”ということを門外の方たちが興味をもってもらえるのではないかと思って筆を進めました」

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