40代OL佳子のスローな日常描く 映画「甘いお酒でうがい」でみせた大九明子監督の新境地

 東京の片隅で生きる、ちょっと扱いづらい若いOLの恋模様をコミカルに描いてきた映画監督、大九明子(おおく・あきこ、51)が新作「甘いお酒でうがい」(25日、ヒューマントラストシネマ渋谷など全国公開)で一転、情感たっぷりの落ち着いた世界を描いている。ガツガツとまでは仕事をせず、程よく酒をたしなみ、スローな日々を重ねる出版社勤務の40代独身OL、佳子(松雪泰子)のマイペースかつ平凡な日常と人生の悲哀に向き合う。新型コロナウイルス禍で巣ごもり生活を余儀なくされた現代人に生き方、価値観、働き方の総点検を促す作品だ。(高橋天地)

内省を重ね、己と戦う

 大九監督は「主人公、佳子に敬意を示す」という。言葉通り、作品では自分にできる範囲で少しだけ前を向き、昨日とは違う新たな自分になろう-と、静かに己と戦う佳子の姿が貫かれている。

 「基本的に佳子は後ろ向きな性格。でも、一人暮らしの彼女は夜、静かな空気感の中で、心にある大きな傷を負った辛い過去を思い出し、その意味合いを考えに考え、納得させて昇華させようともがく。それが『佳子の美学』。いじらしいですね」

 佳子にはモデルがいる。お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうがコントで演じる人気キャラクターだ。このコントに出てくる、ごく普通の40代OL「川嶋佳子」を映画化したのが本作で、じろうは本作で脚本を担当。大九監督とのタッグは2作連続で、じろうは前作「美人が婚活してみたら」(平成31年3月公開)では、お付き合いする男性はなぜか既婚者ばかり…と自己嫌悪に陥る32歳の美人OL、タカコ(黒川芽以)の心機一転を軽やかに描いた。

 本作「甘いお酒でうがい」で、主人公の佳子は毎日欠かさず日記をつけ、駐車場から撤去された自転車との再会など、日々の小さな喜びをつづっていた。会社の同僚で気の合う年下の若林ちゃん(黒木華)とオンオフを問わず気楽に過ごす時間が何よりの癒しだったが、ある日、20歳も年下の岡本くん(清水尋也)と恋に落ち…。

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