「SHIROBAKO展」で学ぶアニメのつくり方 「万策尽きた!」に負けず、コロナにも負けず

 アニメってどうやってつくられているのだろう-。今やスマートフォンで気軽に見られるアニメだが、その制作過程を知る人は決して多くない。その“アニメのつくり方”を一から教えてくれる企画展が、埼玉県川口市のSKIPシティ・彩の国ビジュアルプラザ映像ミュージアムで開催中の「SHIROBAKO展」(埼玉県主催)だ。平成26~27年放送のアニメをテーマとした同展は、初心者にも分かりやすい形でアニメ制作の流れを解説。新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされたが、万策尽きることなく開催に結び付けた。(文化部 本間英士)

アニメ版「朝ドラ」

 「SHIROBAKO」は極めてユニークなアニメだ。ヒロイン・宮森あおいの職業は、アニメづくりのスケジュールや予算などを管理する「制作進行」。他の主要キャラクターも、アニメーターに声優、3Dクリエイター、脚本家…など、全員が作り手だ。アニメ制作で生じる“ドラマ”を、ヒロインの成長を通じて描いた作品で、NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)と通じる点も多い。

 初回放送は6年近く前。主要キャラクター5人をはじめ、各分野の担当者は過酷な労働現場に意見のぶつかり合い、迫り来る〆切などに苦しみながらも、協力して制作に当たる。窮地の状況においてもプロとして少しでも良いものを届けようと奮闘するキャラクターの姿にしびれる。

 作中に登場し、各担当者のはざまで苦悩する制作デスクの口ぐせは「万策尽きた!」。ものづくりに携わる人や、中間管理職的立場の人なら“心の叫び”として共感するに違いない。日々〆切に追われている新聞業界でも隠れファンが随所にみられる。人気は今も続いており、今年2月には劇場版も公開された。

「作りこみ」に衝撃

 本展で展示するのは、同作の原画や背景、美術設定など250点以上。アニメ制作のプロセスを視覚的に学べる仕組みだ。ファン注目の名シーンの原画や、本編では使われなかった“幻のカット”なども展示されている。

 「子供たちにアニメ制作の過程を知ってほしい。ものづくりの面白さを知ってほしい-。展示の狙いはこの2点です」

 同展のキュレーターを務めた鈴木敏之さんは狙いを述べたのち、こう続ける。

 「アニメに限らず、ものづくりに平坦(へいたん)な道のりはありません。クリエイターは不安や葛藤など、さまざまな思いを(作品に)込めています。『SHIROBAKO』はそれを理解するのにぴったりな作品です」

 展示は大まかに、各制作分野ごとに分かれている。例えば、「美術設定」のエリアでは、オフィスやヒロインたちの部屋などの資料を紹介。各キャラクターが使うスマートフォンの設定など、映像には反映されないのでは…と思える点まで細かく作りこんでおり、「こんなところまで詰めているんだ…と感動する」(鈴木さん)仕上がりだ。

 個人的に興味深かったのが、原画・動画などを展示する「アニメーター」エリアだ。作中に小ネタを詰め込んでいることでも定評がある同作。ゴスロリ服に身を包んだクールビューティーの小笠原さん(アニメーター、総作画監督)というキャラクターが登場するのだが、放送時に笑ってしまった「バッティングセンターで元プロ野球選手の小笠原道大氏(日本ハム→巨人→中日)の神主打法で打席に立つ小笠原さん」など、マニアックな作画資料も公開。物語の本筋ではなく、わずかな放送時間しかないシーンにも楽しい“遊び心”を発揮する仕事ぶりに驚嘆した。

 このほか、「撮影・編集」では、アニメのデジタル化によりかつての「セル画時代」からアニメづくりがどう変化したのかを解説。アフレコや効果音、劇中音楽を紹介する「音響」では、声優や効果音づくりを体験できるコーナーもある。同作を手掛けた実在の作り手たちのビデオインタビューもあり、見ごたえ十分だ。

コロナ対策も万全

 同展は本来、今春に開催されるはずだったが、新型コロナ感染防止の観点から6月にずれこんだ。その結果、「企画の中身を詰める時間があった。より充実した展示になったと思う」(鈴木さん)。入館時のマスク着用確認や検温などの対策をしたうえで、館内の清掃・消毒もこまめに行っているという。

 現在、アニメは世界的人気を集めており、声優やアニメーターは子供の間で人気職業となっている。鈴木さんは「こんなご時世なので、多くの人に来てほしいとはいいづらいのですが…」と前置きしつつ、これから職業を選択する子供たちに来てもらえれば、と話している。

 「SHIROBAKO」は全てのものづくりに特有の“熱”が込められた作品だ。同作ファンだけではなく、大人から子供、アニメ初心者からマニアまで幅広く楽しめる展示となっている。

 「SHIROBAKO展 ~SHIROBAKOで学ぶアニメのつくり方~」は9月6日まで(前期は8月2日まで、後期は8月4日から。後期は劇場版を主に扱う)。月曜休館。大人520円、小中学生260円。問い合わせは映像ミュージアム(048・265・2500)。

■SHIROBAKO アニメ業界の日常を描いた群像劇アニメ。平成26年10月~27年3月に放送され、今年2月末には劇場版が全国公開された。監督は「ガールズ&パンツァー」などを手掛けた水島努さん。制作はP.A.WORKS。タイトルの由来は「白箱」で、アニメ作品が完成した際に制作者が最初に手にする白い箱に入ったビデオテープを指す。

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