容赦ない人間描写、どこまでも熱いキャラたちに脱帽 新井英樹原作「宮本から君へ」27日公開

 1990年に「モーニング」誌上で連載が始まったが、容赦ない人間描写で映像化は不可能といわれた新井英樹原作の伝説のコミックがテレビドラマ化され、あろうことか映画にまでなり、27日から公開される。『宮本から君へ』(真利子哲也監督)だ。

 バブルで浮かれていたころの日本では、自爆覚悟で敵に向かうキャラクターの姿がバカらしいと思われたにすぎない。だが小学館漫画賞を受賞し人気が沸騰した。

 金もなければコネもない、熱血営業マンの宮本浩(池松壮亮)は笑顔もさえず、お世辞の一つも言えない愚直な男。仕事仲間の中野靖子(蒼井優)と結ばれ、有頂天。

 ところが靖子は営業先の部長の息子・拓馬(一ノ瀬ワタル)に犯されてしまう。その事実を知った宮本の怒りは怒髪天を突き、飲みつぶれていた自分を責め、拓馬を殺してやると叫ぶのだった。

 レイプシーンも6月に山里亮太と結婚したばかりの蒼井が真に迫った演技ですごい。それ以上に池松の鬼のような表情、ラガーマンの拓馬に1発でKOされ前歯を3本折るシーンや、口からヨダレ、眼から涙、そして鼻水を垂らしながら怒りまくるシーンは、血管がプッツンするのではと思うほどのすさまじさ。

 池松はこのシーンのために本当に前歯を抜く覚悟だったが、原作者の新井秀樹が必死になって押しとどめたという。

 クライマックスは拓馬に戦いを挑む場面。フライ級のボクサーがモハメド・アリに戦いを挑むようなもの。結果は最初から分かっている。風車に突撃するドン・キホーテだ。滑稽ですらある。そして顔は膨れ上がり、指の骨はバキバキに折られ…。それでも靖子の無念と自分のプライドのために立ち向かう。このいちずなバカさ加減が最高に熱いのだ。池松壮亮、一世一代の演技だ。

 今年3月に薬物事件で逮捕されたピエール瀧のシーンもそのまま公開することも特記すべきだろう。真利子監督が「映画に罪はない」と判断したもの。これも勇気ある決断だ。(望月苑巳)

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