こだわりの京アニ作品、マイノリティーにも光

 アニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ、本社・京都府宇治市)は、細部まで完璧に描く作画力やキャラクターの心理を細やかに表現する演出力で、数々の人気作品を世に送り出してきた。その徹底したこだわりやマイノリティーにも光を当てる姿勢はアニメファン以外からも支持されており、質の高い作品を生み出してきたスタジオへの放火で35人もの命が奪われたことに悲しみの声は絶えない。(江森梓、木ノ下めぐみ)

 ■「響け!ユーフォニアム」

 平成27年から放映が始まり、吹奏楽に情熱を傾ける高校生たちの人間模様を描いたアニメ「響け!ユーフォニアム」には、さまざまな管楽器が登場する。一つ一つが細部まで丁寧に描かれ、楽器業界の関係者らも注目した作品だ。

 「マイナーな楽器にスポットを当ててくれたのが、うれしかった」。楽器メーカー大手「ヤマハ」の元社員、原田実(みのる)さん(69)=浜松市中区=は振り返る。タイトルにもあるユーフォニアムは、原田さんにとって特別な楽器だ。高校時代に吹奏楽部に所属し、ユーフォニアムを演奏。入社後は楽器の設計を希望したが、数年は楽器の塗装を担当する部署に配属された。

 念願がかなったのは、30歳のころ。初めて設計を手がけたのもユーフォニアムだった。華やかな音色のトランペットに比べると派手さはないが、「流れるようなメロディーを奏でられ、演奏に厚みを持たせるために必要な楽器なんです」と話す。

 実は、京アニは同作品を制作する際、ヤマハの子会社「ヤマハミュージックジャパン」に楽器の貸し出しを依頼したが、主人公が演奏するユーフォニアムだけはこだわりがあったため購入していた。

 原田さんは作品を見て、あまりに楽器が忠実に再現されていたことに驚くとともに、設計に打ち込んだ自身の青春時代を思い出した。「彼らも同じように夢や情熱を持っていたと思うと、やりきれない」。事件で大勢の若い社員らが犠牲になったことを憤り、「京アニには亡くなった方々の遺志を継いでこれからもすばらしい作品を作り続けてほしい」と願った。

 ■「聲の形」

 平成28年に映画化された「聲(こえ)の形」は、聴覚障害を理由にいじめを受けるヒロインと、いじめる側の少年を中心にコミュニケーションの難しさや大切さを伝える内容で、聴覚障害のある学生にもファンが多い。

 いじめや自殺の防止、障害者への理解を呼びかけるため、文部科学省とタイアップした同作品のポスターが全国の学校で掲示されたことも話題になった。大阪府内のある聴覚支援学校の校長は「校内でポスターを目にして、とても気になっていた作品。子供たちも同じだったと思う」と振り返る。

 兵庫県のある聴覚支援学校では、授業で同作品の上映会を複数回実施した。女性教諭(55)は「聴覚障害者というマイノリティーの存在を取り上げてくれた。子供たちにも人気です」と話す。

 作品では、少年がヒロインの補聴器を無理やり奪い取るなどのいじめを続けるが、その後いじめられる側に立たされたことで、自らの過ちに気づくまでの心理描写が繊細に描かれる。別の女性教諭(57)も「ヒロイン同様に、障害を理由にいじめを受けた児童もいる。障害を受け入れて歩み寄る2人の姿に共感し、勇気をもらったようだ」と語る。

 授業での同作品の活用は児童生徒からの要望が多いといい、女性教諭らは「聴覚障害を題材に映画化してくれた京アニには、感謝の気持ちしかない。また温かい作品を作ってほしい」と期待を込めた。

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