運営者拘束も「第二の漫画村」すでに出現 著作権の侵害は今も深刻

 「史上最悪の海賊版サイト」-。フィリピンで7日拘束された星野路実(ろみ)容疑者が運営していたとみられる「漫画村」(すでに閉鎖)は、被害規模の大きさからこう呼ばれていた。星野容疑者の拘束を受け、長年被害を受けてきた出版業界からは歓迎の声が上がった。だが、最近になり「第二の漫画村」などと呼ばれる別の海賊版サイトが次々と出現。著作権の侵害は今も深刻だ。(文化部 本間英士)

■出版業界は歓迎

 日本の捜査当局などによると、福岡県警などが著作権法違反容疑で星野容疑者の逮捕状を取った。フィリピン入国管理局は、日本側の要請に基づき拘束したという。今後、強制送還の手続きを進め、身柄を日本に移送後逮捕する方針。

 「国際的連携により、海賊版サイトの運営者を拘束できたのは非常に心強い。『悪いことをすれば捕まる』という当たり前の事実が広まるのは大きいし、協力者や他の運営者への抑止効果も期待できる」

 海賊版対策に長年取り組むコンテンツ海外流通促進機構(CODA)の後藤健郎代表理事はこう語った。

 出版業界も歓迎する。出版業界9団体で構成される「出版広報センター」は10日、「日本の捜査当局ならびにフィリピン当局の尽力に感謝するとともに、これを機に『漫画村』の全容が解明されることを期待します」とコメントした。

■電子は回復基調

 漫画村は平成27年ごろ開設された海賊版サイトだ。公式サイトと間違えるほど精巧な作りで、『ONE PIECE(ワンピース)』や『進撃の巨人』といった人気作を発売直後に無断掲載。CODAの推測では利用者が急増し始めた29年9月からの半年間で延べ6億人超が閲覧したという。試算された被害額は約3200億円にのぼる。

 収入源は広告で、少なくとも数億円規模を稼いでいたとみられる。危機感を募らせた出版業界は約2年前、複数の出版社が容疑者不詳で刑事告訴していた。昨年4月、政府が漫画村など3サイトを名指しで悪質だと指摘した直後に閲覧できなくなった。政府はその後、強制的に閲覧を止める「接続遮断」(ブロッキング)の法制化も目指したが、憲法が定める「通信の秘密」を侵害するとの意見もあり、断念した。

 漫画村の閉鎖により、これまで打撃を受けていた電子出版は息を吹き返した。出版科学研究所の調査によると、昨年の電子漫画の売り上げは前年比14・8%増の1965億円。出版関係者は「漫画村がなくなり、電子の売り上げは明らかに回復した」と語る。

■海賊版利用はリスク

 だが、漫画村閉鎖から1年以上たった今も、別の海賊版サイトが次々と誕生。今も100~200程度が存在するといわれ、今年5月ごろには「第二の漫画村」とささやかれるサイトも出現した。そのうち一つは9万冊以上の本を無料で読めることを売りにしており、SNS(会員制交流サービス)などを通じて存在がネット上に拡散。違法性を承知の上で使用しているユーザーもおり、状況は今も深刻だ。

 CODAなどの働きかけにより、大手検索エンジンで「第二の漫画村」は表示されなくなった。後藤代表理事は「収入源となる広告の表示停止など、対策を幅広く進める必要がある」と語ったうえで、「海賊版サイトの利用は、マルウェア(ウイルス)などの被害を受けたり、個人情報が抜き取られたりするリスクがある。『タダより高いものはない』ということをさらに周知したい」と話している。

     ◇

 海賊版サイト 漫画や書籍、映画などを著作権者の了解を得ないまま無料で閲覧できるようにしたインターネット上のサイト。著作権侵害の被害が近年深刻化し、漫画家や出版社などは「漫画家や作家の生活が成り立たなくなる」として、サイトを利用しないように呼び掛けている。

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