歌舞伎クール!漫画やアニメが原作の新作歌舞伎続々 歌舞伎の“世界戦略”か

 世界的に親しまれている日本の漫画やアニメが相次いで新作歌舞伎になり、若者を中心に新たなファン層を獲得している。平成27年に社会現象を巻き起こしたスーパー歌舞伎II「ワンピース」に続いて、今月、京都・南座では忍者の世界を描いた「NARUTO-ナルト-」、今年12月には宮崎駿監督のアニメーション映画「風の谷のナウシカ」も同名歌舞伎化される。インバウンド(訪日外国人客)や海外公演も視野に入れた展開に、歌舞伎の「世界戦略」も透けてみえる。(亀岡典子)

 ゴーッと轟音をたてて流れ落ちる大滝。落ちこぼれ忍者のナルト(坂東巳之助さん)とライバルのサスケ(中村隼人さん)が、本水(本物の水)の中で戦う激しい立ち回り。客席まで飛び散る水しぶきに場内から歓声が上がった。

 南座で上演中の新作歌舞伎「NARUTO-ナルト-」。客席には普段の歌舞伎公演ではあまり見かけない子供たちや若者、外国人グループの姿が目立った。

 「おもしろかった」と話すのは大阪府寝屋川市の小学3年、井上暖琉君(8)。「NARUTO-ナルト-」の歌舞伎公演のポスターを見て「行きたい」と母親に頼んだ。「ナルトがかっこいい。歌舞伎は初めて見たけどわかりやすかった」

 原作は、国内でシリーズ累計1億4千万部、40以上の国と地域で流通し、海外にも多くのファンを持つ岸本斉史さんの同名漫画。その歌舞伎化は、若手の歌舞伎俳優中心の座組(ざぐみ)で、昨年8月、東京で初演。見得や本水の立ち回りなど歌舞伎独特の演出と最先端映像技術を駆使した舞台は人気を呼んだ。

 そもそも、日本の漫画を原作にした新作歌舞伎の第1弾は世界中にファンのいる「ONE PIECE」で、27年、スーパー歌舞伎II「ワンピース」として市川猿之助さんを中心に上演。猿之助さんふんする主人公がサーフボードに乗って宙乗りするシーンでは観客が総立ちになるなど、新たな観客層を巻き込んで大ヒット。大阪松竹座や福岡、名古屋でも再演された。

 伝統芸能の歌舞伎と、サブカルチャーの漫画やアニメは一見、ミスマッチに思える。しかし、「漫画はキャラクターの個性がはっきりと確立されており、それが歌舞伎の敵役なり二枚目なり、芝居の中で役割が明確な人物像とうまく合うのではないか」と演劇評論家の犬丸治さんは分析する。

 両作とも、原作ファンにも受け入れられるよう、衣装や髪形、化粧などキャラクターのビジュアル面での再現度の高さも話題になった。また、世界的に知名度があるため、歌舞伎に興味のない人をも引きつける力がある。

 犬丸さんは「歌舞伎には漫画やアニメに共通する、アッと驚くような発想やイメージの飛躍があり、それも相性の良さにつながっている」。

 今月、東京・歌舞伎座で上演されている「月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち」も、みなもと太郎さんの歴史漫画「風雲児たち」を原作に三谷幸喜さんが作・演出をつとめた新作歌舞伎。また、12月に東京の新橋演舞場で上演される「風の谷のナウシカ」も、宮崎監督作品の初の歌舞伎化として早くも注目を集めている。

 一方、南座で上演中の「NARUTO-ナルト-」では、インバウンドを主なターゲットに今月10日夜の部のみ、通常の開演時間を2時間遅らせ、午後6時に延ばした。ナイトカルチャーを意識した試みだ。

 松竹の安孫子正副社長は「日中、神社仏閣などをめぐって夜はゆっくり歌舞伎を鑑賞していただければ」。同時に「漫画やアニメを原作にした新作歌舞伎が、若い人の歌舞伎への入り口になればうれしい。原作の世界的な知名度を生かして将来的には海外公演も考えたい」と話している。

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