「ラブライブ!」舞台の沼津 アニメ未登場でも「聖地」にしてしまう驚きの手法とは

 アニメやゲーム、マンガの舞台を地域振興の資源にする取り組みが、日本全国で盛んになって久しい。

 作品のファンがそのモデルとなった舞台を訪れることは「聖地巡礼」とも呼ばれ、2016年には新語・流行語大賞にもノミネートされた。岐阜県の飛騨地方を舞台にしたアニメ映画「君の名は。」の大ヒットを受けてのものだ。岐阜市に本社を置くシンクタンク「十六総合研究所」の調べによると、岐阜県への「聖地巡礼」による16年の経済効果は約253億円、岐阜県全体への聖地巡礼者は約103万人に上る。

 こうした「アニメ作品と地域を連携させて振興に結び付けよう」とする動きは、「君の名は。」に始まったものではなく、07年に放送された、アニメ「らき☆すた」を用いた埼玉県の久喜市商工会の取り組みに端を発する。以後この12年あまりの間、50を優に超える自治体と作品とが、地方創生の資源として活用されてきた。

 「ラブライブ!サンシャイン!!」と沼津市

 ではいま、一番盛り上がっていると言えそうな地域はどこだろうか。代表的といえるのが、静岡県沼津市による、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」を用いた取り組みだ。

 この作品は、沼津の9人の女子高生が、自分たちの通う高校の統廃合を阻止するために、スクールアイドルグループ「Aqours(アクア)」を結成し、立ち上がる物語。16年7月から9月、17年10月から12月の2期に分けてTVアニメが放送された。「Aqours」は現実の音楽アイドルグループとしても活躍しており、18年のNHK紅白歌合戦に出場した。

 沼津市と「ラブライブ!サンシャイン!!」のつながりは、アニメ放送前から始まっており、雑誌「電撃G's magazine」(KADOKAWA)で15年4月に企画が発表された段階から舞台は沼津であると告知され、「Aqours」の声優が複数回、沼津市を訪れている。

 作品の舞台の中心となっていたのが、沼津駅前からバスで南に40分ほど行った内浦地区だ。ここには主人公達が通う高校のモデルとなった学校があり、作中の生活の拠点として描かれている。ここにある「三の浦総合案内所」はファン交流の「聖地」となっていて、アニメ放送前の15年度の来所者数が8888人だったものが、16年には3万9584人、17年には7万3807人、18年には7万9175人と右肩上がりで、実に約9倍の伸び率となっている。

 近隣に住む60代女性はこう話す。

 「作品が放送される前までは、一部歴史散策に訪れる人がいる程度で、ほとんどの観光客は伊豆のほうへ車で通過していくだけでした。それが、こうしてわざわざ立ち寄られる人が増えたことは本当に驚くべきことです」

 中心部を「通過」するアニメファン

 アニメの舞台となったことで、当時、「聖地」を訪れようとするファンの多くは沼津駅に降り立ち、そこでバスやタクシーに乗り換えるという動き方をしていた。そこで、沼津市でバスやタクシーを運営する伊豆箱根鉄道は、作品のキャラクターが描かれたラッピングバスやタクシーを登場させ、ファンをもてなした。また、内浦地区に行くには隣の三島駅で伊豆箱根鉄道に乗り換え、伊豆長岡駅からバスに乗るのも有用な交通手段であるため、ラッピングトレインも走らせた。

 だが、こうした導線だと、多くは肝心の沼津市中心部を通過していってしまう。沼津商工会議所の中北俊さんは当時をこう振り返る。

   「16年9月にアニメ1期の放送が終わり、全国から大勢のファンの方が沼津を訪れるようになりました。しかし沼津駅に降り立っても、そのまま内浦のほうに向かう方が多かったのを覚えています。沼津には商店街が多いのですが、そこをわざわざ歩いて回る方は少数でした。このままだと地元の理解が得られにくいのではないかという懸念がありました」

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