相次ぐ芸能人が関与する事件…容疑者作品「自粛」の是非

【日本の議論】

 芸能人が関与する事件が相次いでいる。その出演作品は「公開を自粛するべきだ」として放送や販売、配信停止になるものがある一方で、「作品に罪はない」と公開されたケースも。容疑者となった芸能人と作品の関係について、どのように考えるべきなのか。芸能文化評論家の肥留間正明氏と、上智大教授の碓井広義氏に聞いた。

 肥留間氏「一定期間やむを得ない」

--容疑者が出演する作品の扱いについて、この機に考えようという動きがある

 「現在放送されているもの、事件発覚後に放送、公開されるものは自粛せざるを得ない。当該芸能人の活躍の場がテレビなのか舞台なのか、立場は主役なのか脇役なのかによっても対応は異なるが、特にテレビ番組はコマーシャル(CM)と放送法で成り立っている世界。CMスポンサー企業に対する配慮は欠かせない」

 --自粛は過剰反応との声も

 「芸能人の収入は近年、CM収入の占める割合が大きくなっている。このギャランティー(出演料)の仕組みが変わらない限り自粛はやむを得ず、こうした対応は続くだろう。30年ほど前、ギャラにおけるCM収入はそれほど重要ではなかった。それぞれのフィールドで、芝居や歌といった芸を磨いて収入を得ていた。娯楽の変化によって活動の中心がテレビに移り、俳優でも歌手でも、タレントと大差ない活動をするようになった結果、CM収入が占める割合が大きくなった」

 --企業は、不祥事を起こした芸能人を起用し続けた場合の批判を気にしている

 「広告塔になっている芸能人のイメージやモラルが重視されるのは当然のこと。国を挙げて根絶に乗り出している犯罪である違法薬物が、真っ当なルートで手に入るはずもなく、反社会勢力と交際している可能性もある。ギャラが反社会勢力に流れる可能性があるというだけでも企業の信用に関わる。一方で、芸能人たちは世間の見方が近年厳しくなっていることに気付けていない。法律を甘く見ているふしがあり、いつまでたっても芸能界から薬物が排除されない」

 --被害者のいる性犯罪などと、薬物事犯は対応を変えるべきだとする意見もある

 「薬物事犯に被害者がいないと考えるのは愚かだ。チケットを購入して作品を見る、またCDを聴いて応援しようとしたファンの思いが収入につながっているわけで、その金で違法薬物を手に入れるのはファンの心情を踏みにじる行為ではないか」

 --罪を償って活動を再開させている芸能人もいる

 「そうした事実が、最初から自粛は必要ないという論調につながっているのだろうが、何をして仕事を失ったのか反省しなければ過ちを繰り返す。ただし、どんな作品も、世に出るまでさまざまな人が携わっている。存在しなかったものにしてしまっては、その人たちが報われない。時間をおいて、視聴者が作品を味わえるようにすることは必要だ」(石井那納子)

 ひるま・まさあき 昭和24年、埼玉県生まれ。芸能文化評論家、作家、ジャーナリスト。日本大学法学部卒業後、週刊誌記者を経て「FLASH」(光文社)創刊などに携わる。著書に「龍馬と海」(音羽出版)など。

 碓井氏「安易な決定は思考停止」

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