LINE8600万人利用 社会インフラの情報流出リスクに懸念の声

 国内で約8600万人が利用するLINEは、今や自治体の情報発信や各種手続きなどにも活用される社会インフラだ。厳格な管理が求められる個人情報が中国の関連会社技術者に閲覧可能な状態となっていたことに対し、自治体関係者からも懸念の声が上がった。

 大津市ではLINEで水道・ガスの開栓・閉栓を受け付けるほか、決済機能「LINE Pay(ラインペイ)」で市税や保険料も納付できる。奈良市も国民健康保険の手続きや、子供の医療費助成申請に活用中だが、手続きでは身分証の画像や口座番号などをやり取りすることも。和歌山県では、一部で問い合わせにAI(人工知能)で回答する「チャットボット」機能を搭載しており、利用者側が個人情報を含んだ内容を書きこむ可能性もある。

 各自治体の担当者は「運用状況を確認して対応を考えたい」、災害時に市民と双方向で情報をやりとりできるサービスを利用中の神戸市も「必要があれば代替ツール活用も検討したい」とした。

 一方、災害時の庁内情報共有ツールとして「LINE WORKS」を導入している京都市は問題を受けて運営会社に電話したが、「別会社なので問題ない」との回答を受け、見直しは検討しない方針。平成28年の熊本地震を機に、情報活用に関わる連携協定を締結している熊本市も「利用者に個人情報の登録は求めていないので直接的な影響はない」として、「見直しは検討していない」とした。

 大阪府は医療従事者向けの新型コロナウイルスワクチンの予約システムにLINEを活用。吉村洋文知事は、「機密情報はLINEでやり取りすべきではない」とする一方、「現段階でシステム変更は考えていない」とした。

 府は昨年8月、情報流出の懸念があるとして、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の公式アカウントを府独自の判断で停止している。吉村知事はLINEとの業務提携のあり方について、「国が方針を示さない限り、府単独で判断するのは難しい」と述べた。

個人情報の扱い「見直す契機に」

 サイバーセキュリティーに詳しい神戸大の森井昌克教授は「LINEは自治体の行政サービスにも関わっているが、個人情報への意識は低いままといえる」と指摘し、「情報を扱うほかの企業にもひとごとではない」と訴える。

 森井氏によると、情報を取り扱う企業にとり、業務を下請けに委ねる手法は一般的で、優れた技術を持つ中国企業に委託するケースは少なくない。だが、このシステムで「個人情報を実際にどの会社が管理しているのか分からなくなり、知らないうちに情報が漏(ろう)洩(えい)する恐れもある」という。

 サイバー社会では個人情報が「一番の武器」となるため、欧州などでは規制が強まっている。森井氏は「今回の問題が直接市民に影響を与えることはないだろうが、軽視せず、個人情報の取り扱いを見直す契機にすべきだ」としている。

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