アップルとFBが泥沼対立 追跡型広告めぐる個人情報保護で

【経済インサイド】

 個人情報保護をめぐって米IT大手のアップルとフェイスブック(FB)が対立を深め、両社トップによる舌戦を繰り広げている。アップルが今春から、アプリによる利用者情報の追跡通知を強化すると表明。FBは、収益源の広告ビジネスが打撃を受ける恐れがあるため、猛反発している。FBがアップルの提訴を検討しているとの報道もあり、米ハイテク集積地シリコンバレーの隣人同士の争いが泥沼化している。

 「生活の全データが収集され、販売されるのが当たり前になれば、私たちは人間としての自由を失う」

 アップルのクック最高経営責任者(CEO)は1月28日、個人情報に関するオンライン会議に参加し、そうFB批判を展開した。

 FBは交流サイト(SNS)で収集した個人データを分析し、利用者の関心に沿った広告を表示するターゲティング(追跡型)広告で巨額の利益を上げてきた。クック氏は名指しを避けつつ、そんなFBの事業モデルに矛先を向けたのだ。

 その前日には、FBのザッカーバーグCEOが電話会見で、アップルが「プラットフォームの支配的な立場を使って、当社アプリの機能を阻害しようとしている」と非難していた。

 対立の発端は、アップルが今春から、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」など自社製品の仕様を変更し、アプリ開発業者による利用者データの収集を「事前許可制」に変更することがある。

 端末画面にデータ収集を認めるか確認のメッセージを表示し、同意しない利用者はターゲティング広告などの行動追跡の対象外とする。利用者が自分のデータを管理しやすくし、個人情報保護の強化につなげる狙いがあるとしている。

 一方、多くの利用者が許可しなければFBなどの業者には逆風だ。実際、ある世論調査では「許可する」が2割にとどまり、「許可しない」は6割に迫った。業界関係者から「FBは多額の収益減を余儀なくされる」との見方も出ている。

 アップルはFBによる個人情報の大規模流出が2018年に発覚して以降、プライバシー保護をめぐって同社批判を強めてきた。ともにシリコンバレーを代表する巨大ITのトップが公然と非難合戦を繰り広げ、波紋が広がっている。

 FBは1日、データ収集に向けた利用者の理解を得ようと、アプリ画面に独自の説明を表示する方針を明らかにし、アップルに対抗する構えだ。また、米ネットメディア「ジ・インフォメーション」によると、FBは反トラスト法(独占禁止法)違反でアップルを提訴する準備を進めている。

 一方、欧州連合(EU)欧州委員会のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は8日、ロイター通信のインタビューで、アップルが差別的にFBのアプリを不利に扱えば「競争上の問題となり得る」と述べてアップルに警告。同社の個人情報の扱いに関する仕様変更が、すべてのアプリ開発者に公平になるよう、くぎを刺した。(ワシントン 塩原永久)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ