【九州・山口 新年インタビュー】「知見生かしコンサル営業を強化」谷川浩道・西日本フィナンシャルホールディングス社長

 昨年は何と言っても新型コロナウイルスに振り回された。緊急事態宣言が発令された4、5月あたりに経済的な影響がもろに出てきた。6月以降、少しずつ自粛が解除され、経済活動も若干戻ったが、当然完全には元に戻り切れていない。

 特に飲食、ホテル、サービス業など個人の顧客を対象とする業種の落ち込みが激しい。個人消費が冷え込み、経済全体もそれに引っ張られて弱くなってしまった。

 貿易面では、世界全体が落ち込む中で中国がいち早く復活した。自動車関係はそれに助けられた面もあった。半導体は、第5世代(5G)移動通信システムの投資やウェブ関連の巣ごもり需要などで底堅く推移してきたし、引き続き好調だろう。

 一方、インバウンド(訪日外国人客)がなくなり、特に九州経済に大きな影響を及ぼしている。当面、回復は期待しないほうがいいという状態だ。

 われわれの知恵と覚悟が求められる、今年はそんな1年になるのではないか。

■手数料収入伸ばす

 銀行業績への影響はプラス、マイナス両面あるが、令和3年3月期の動向ではプラスの方が少し大きい。信用コストはコロナの影響を見込んで多めに積んでいるが、その範囲に収まるだろう。収益面で積極的な融資が貸出金利息の上振れにつながった。

 ただ、来期以降はこのままでいくとはとても思えない。不透明感がある中、一部で設備投資やプロジェクトを先送りする動きが出てきている。そうなると融資にも跳ね返ってくるので、先行きは予断を許さない。

 コロナに加え、日銀によるマイナス金利政策は長期化し、銀行にとって厳しい経営環境が続いている。それは今後も当面は変わりそうになく、残念ながら構造的なものと受け止めて対応していく以外に生き残る道はない。

 貸し出しなど伝統的な銀行業務だけは利益を上げることに限界がある。どうやって生き残るか。「法人ソリューション部門」を中心にコンサルティング営業に力を入れていく。

 同部門には農業や運輸、医療などいろいろな分野に担当者を置いている。専門的な知見を生かして、お客のニーズを踏まえて、一緒に知恵を出しながらやっていく。

 専門性を生かした融資、コロナ下で要望が強まっているM&A(企業の合併・買収)や事業承継にもしっかり対応していく。少しでも多く手掛けて、課題となっている手数料収入を伸ばしていく。そのためにも付加価値のある仕事をしていかなければいけない。

 私から注文しているのは「新しいアイデアを出して、いろいろなプロジェクトを仕掛けていこう」ということ。コロナで動きが鈍くならざるを得なかったが、だんだんと検討が進んできており、今年は具体化させたい。

 銀行業以外に枠を広げるのであれば、地域商社の設立も選択肢に入ってくるが、収益化が難しい。ノウハウの問題や銀行法上の規制などリスクをとって進めていくのは、そう簡単ではない。収益が上がらなければ長続きはしない。いろいろなことを考えながら、何にチャレンジするのか、きちんと整理しなければいけない。

■過剰反応しない

 もう一度、銀行店舗の役割を根本から見直してもいいと思っている。デジタル化の進展で店舗の役割も、まだまだ変わってくるだろう。

 傘下の西日本シティ銀行では、現行の中期経営計画で、令和4年度までに現在171ある営業店を157店に減らすことを目標に掲げている。私が同行頭取に就任した平成26年には198店あったので、そこから約40店減ることになる。法人営業を集約したり個人営業に特化したり、店の性格や中身も変えてきている。

 できるところではデジタル化を進めていくが、すべてをデジタルで代替することはできない。融資や資産運用の相談などは電話やウェブでは真意が通じない。人と人が直接話して意思疎通を図る「ヒューマンタッチ」が欠かせない。営業店は人間同士でなければできないような業務に特化し、人間的な温かみのある対応が必要とされる場合は、それをフルに駆使していく。

 コロナ下での経験を踏まえて、今年は十分な感染防止を施した上でやれることはなるべくやっていくということが大事だ。要は過剰反応しないということ。心配の声に引きずられていろいろな催しなどが中止になっているが、怖がってばかりいてもしようがない。守りの発想より、ポジティブな面を最大限引き出していきたい。(小沢慶太)

 【谷川浩道(たにがわ・ひろみち)】 昭和28年7月、福岡県生まれ。東京大法学部を卒業後、51年に大蔵省(現財務省)に入省。横浜関税長や大臣官房審議官などを経て、平成23年から西日本シティ銀行専務。26年6月から同銀行頭取を務める。28年10月、西日本フィナンシャルホールディングスが発足し、社長に就任。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ