賃金はこの先も上がらず…… コロナ禍ではびこる「内部留保肯定説」と、企業の自殺

働く人の心身を大切にすれば、企業も健康になる

 「健康職場(healthy work organization)モデル」という考え方があります。これはかつて米労働安全衛生研究所(NIOSH)が提唱したモデルで、「労働者の健康と満足感と、職場の生産性や業績には相互作用があり、互いに強化できる」として、働く人が心身ともに健康であり、仕事に満足して働けるような組織作りを目指せば、働く人たちは能力を発揮することができ、創造性が高まる。それがひいては生産性の向上につながり、結果的に組織の業績に好影響をもたらすことが期待されます。

 業績が良ければ、賃金や処遇にも反映され、彼らの労働意欲もますます高まり、はつらつと仕事をこなすことができる。つまり、「個人の健康=心身の満足感を第一に考えることで、企業も健康になる」のです。

 健康職場モデルは、まさに「人」を重視した働かせ方です。数字は人を大切にすれば必ずついてくる、という「数字の前に人を見よ」ってこと。賃金カット、コストカットは、短期的にみれば「企業を生かす」ことになりますが、長期的にみると全く逆なのです。

 健康職場モデルが提唱されるに至った背景には、「生産性を上げるためには労働者を低賃金で酷使するしかない」という考え方が主流を占め、トップによる「生産性を上げろ!」という指針の下で多くの労働者がメンタルヘルスを損なっていた社会状況がありました。

 残業文化は日本だけでなく欧米にもあり、古くは「会社が生き残るには、従業員にがむしゃらに仕事をしてもらわないとしょせん無理な話」と考える経営者がほとんどだったのです。

 しかし、今、優秀な経営者は「人」を大切にします。

 18年、米アマゾンが最低賃金を時給11ドルから15ドルに上げると発表し、大きな話題となりました。賃金を上げる企業は優秀な人材を魅了します。そこで働く人たちのモチベーションだって高まります。高い賃金の仕事を失いたくなければ「肩たたきをされない」ように、働く人たちはもっともっと頑張ることでしょう。

 企業は厳しいときこそ、「人」に投資し、未来に備える必要があります。こんなときだからこそ、企業は賃上げに取り組むべきです。

 繰り返しますが、おカネが全てではありません。しかし、おカネは人の生きる力を引き出す極めて大切なリソースです。それと同時に、個人の幸福感をも左右するのです。

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