菅政権推進の「国際金融センター」構想 関西、福岡で誘致の動き活発化

 日本に世界の金融ハブ(拠点)をつくる政府の「国際金融センター構想」をめぐり、候補地とされる各地の動きが活発化している。大阪府は吉村洋文知事が意欲を示し、ネット金融大手のSBIホールディングスと連携。兵庫県は神戸市と協議を進め、海外事務所を通じた情報収集に動き出したことが分かった。福岡では行政と経済界が推進組織を立ち上げ、政府も各地の動きを支援する姿勢を示す。(岡本祐大)

 ■大阪ベイエリアが候補

 世界中から人材や資金、情報が集まり、金融取引や投資の拠点となる国際金融センター。菅義偉首相は5日、報道各社のインタビューで「わが国の市場の活性化が期待できる」と言及。課題となる税制上の措置や在留資格の問題などに「スピード感をもって取り組む」と説明した。これまでは金融機関が集まる東京が大本命と目されていたが、菅首相は「ほかの地域でも金融機能を高めることができる環境をつくっていきたい」と述べ、東京以外の地域にも含みを持たせた。

 東京以外の有力な候補地とされるのが関西と九州だ。大阪府の吉村知事は府議会などで「大阪の成長に重要なことだと認識している」と強調。大阪都構想を絡めて「国際金融都市として東京と競えるものを目指したい」とした。

 吉村知事が初めて意欲を示したのは9月9日の記者会見。「アイデアの段階」と断りつつも、国による税制優遇や在留資格緩和の必要性を訴え、誘致先に大阪ベイエリアを挙げるなどした。庁内からは「これまで知事から『国際金融センター』について聞いたこともなかった」と戸惑う声も上がるが、府は関係機関への情報収集を急いでいる。

 ■背景にSBI社長の存在

 背景にあるとみられるのは、SBIホールディングス北尾吉孝社長の存在だ。8月に面談した両者は「アジアの金融ハブを目指す」などと意見交換し、構想実現に向けて動き出した。

 また、北尾氏が大阪と合わせて候補地に挙げる兵庫県は、神戸市と事務方レベルで協議を重ねる。両自治体は香港や中国・上海の現地事務所を通じて、市場関係者らへの聞き取りを進める。外資系企業の本社があることや、外国人学校など住環境が整っている点が強みで、井戸敏三知事は県議会で「神戸市とともに検討を重ね、手を挙げていきたい」と明言。大阪との協力も「不可欠と考えている」と連携に向けた秋波を送る。

 一方、福岡では9月、県と市、地元経済界が誘致のために新組織「TEAM FUKUOKA」を設立。会長には麻生太郎財務相の弟の麻生泰・九州経済連合会会長が就いた。西村康稔経済再生担当相がアジアとの近さや、国家戦略特区制度を活用する市などの施策を挙げて「福岡には強みがある」と持ち上げるなど、政権との近さが強調材料になっている。

 ただ、東京都は小池百合子知事の就任以来、「国際金融都市・東京」実現に官民挙げて取り組み、すでに外資系金融機関が集積している。東京以外に分散すれば市場としての魅力低下につながりかねないと懸念する見方もある。

 また、外国企業や人材の誘致には、法人税や所得税の優遇措置や在留資格の見直しがカギを握る。政府がどこまで規制緩和を進められるかが焦点になる。

 国際金融センター 国際的な金融取引や投資活動の拠点となる都市。米ニューヨークや英ロンドンが代表。アジアの金融センターである香港が政情不安になったことで、日本国内で受け皿を目指す議論が活発化。政府は7月にまとめた経済財政運営の指針となる令和2年の「骨太方針」に「世界・アジアの国際金融ハブとしての国際金融都市の確立を目指す」と明記した。

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