酒税改正で第3のビール値上げ 消費税増税より影響大 競争激化か

 新型コロナウイルスの感染拡大で外食業界とともに大きな影響を受けた国内ビール類市場に10月1日の酒税の税率改正が迫ってきた。今回の税率変更では、価格の高いビールが値下げとなり、低価格で人気を集めた第3のビール(新ジャンル)が値上げになる。第3のビールの値上げ幅は昨年10月の消費税率引き上げ時より大きいが、ビール各社は中期的なビール類市場を変革する好機ととらえており、今後のシェア争奪戦が激化しそうだ。

 「お客さんは何がビールで何が第3のビールか分からない。正しい情報を伝えないと、間違った駆け込み購入をさせてしまう」

 イトーヨーカドー大井町店(東京都品川区)の食品担当責任者は厳しい表情を浮かべる。

 昨年10月の消費税率の引き上げ時は酒類すべてが実質値上げになった。しかし今回の値上げ対象はビール類では第3のビールのみ。各社のブランドが乱立するビール類市場では、商品名だけで第3のビールかどうかを見抜くのは難しく、売り場が混乱するおそれがある。

 大井町店ではビール類の売り場に「第3のビール(新ジャンル)は酒税が上がります」とのポップを張り出し、第3のビールだけ箱買いコーナーを設置した。月末に近い26、27日の週末に注文のピークが来ると見込む。

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 今回の酒税改正は350ミリリットル缶1本当たり換算で、ビールは7円減税、第3のビールは約10円増税となる。ビール各社は増減税分を出荷価格に反映させる方針で、第3のビールは2~3円の値上げにつながった消費税率引き上げ時より影響が大きい。アサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビールの大手4社は駆け込み需要に備え、9月に1~3割の増産体制を敷いた。

 一方、各社は10月以降の市場動向には頭を悩ませている。税率引き上げの結果、第3のビールの売り上げが落ちると見るのが自然だが、1~8月の第3のビールの販売数量はコロナ禍に伴う巣ごもり需要を追い風に前年同期比6%増と好調だった。10月以降も引き続き、第3のビールに支持が集まる可能性もある。

 また第3のビールの値上げでさらに価格が安い缶チューハイへの移行が進めば、ビール類離れが起きかねない。酒税改正は各社にとって収益構造の変動をもたらす要因といえる。

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 ただし今回の酒税改正は令和8年10月に予定される、発泡酒も含めたビール類の税率一本化への第一歩という側面もある。各社の間では複雑な税率がシンプルになることを歓迎する声も多い。

 キリンの布施孝之社長は「ビールの酒税は諸外国に比べても圧倒的に高く、区分も分かりにくかった」と指摘。アサヒの塩沢賢一社長も「業界にとってビール減税は悲願。ビールに客を呼び戻すチャンスの到来だ」と意気込む。

 利益率が高いビールの価格がさらに安くなり、消費者が手を伸ばしやすくなることは各社にとってまたとないチャンスだ。コロナ禍で家飲み需要が増す中、食卓を彩るビール類での新たな戦いが間もなく始まる。(日野稚子)

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