最後に戻る居場所は自分の家族 映画『最高の人生の見つけ方』を鑑賞

 米国版も同様に、専用ジェット機をチャーターして、やはりスカイダイビングで空を舞ったり、レーシングカーに乗って互いに競争したり、サファリパークにも足を運ぶ。またエヴェレストを目指してヒマラヤにも飛ぶ。どちらの物語も陳腐な内容になりかねないストーリーであるが、名優のやり取りがリアリティーを演出している。

 世界を股にかけて「やりたいことリスト」をやりつくした4人は、いずれも日常の生活に戻っていく。主婦は、頼りにならない夫との相互理解が深まり、気の強い娘と引きこもりの息子に気持ちを通じ合わせることができた。女性社長は、子どもの頃に自分をひどい目に遭わせた認知症の父親を許す気持ちになる。

 米国版の自動車修理工は、看護師の妻や子どもや孫たちに温かく見送られながらあの世に旅立つ。また大富豪は、長く関係の途切れていた一人娘の自宅を訪問して、ぎこちないながらも娘と孫と一緒の時間を過ごす。そして孫の女の子を抱きしめてキスをする。「世界一の美女とキスをする」と書いた棺おけリストの内容を実現したのだ。

 残りの人生をとにかく好きなことをやり尽くそうと世界中を巡り、いろいろなことを体験した4人であったが、結局、最後に戻る居場所は自分の足元の家族なんだと、2つの映画はともに主張しているように私には思えたのである。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。20年1月に『定年後のお金』(中公新書)を出版。

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