スガノミクスにハードル 構造改革は長期戦不可避 菅内閣発足

 16日発足した菅義偉(すが・よしひで)政権の経済政策は、前政権で道半ばだった構造改革や規制緩和などの産業政策を主軸に据えている。行政や大企業の既得権益を打破し、競争原理を働かせることで国民の生活水準を向上させる成長戦略だが、強い抵抗が予想され実現には時間がかかりそうだ。「スガノミクス」の具現化には、衆院解散・総選挙や新型コロナウイルスの再拡大といったハードルを乗り越え、政権基盤を確立する必要がある。

 「役所の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破して、規制改革を進める」

 菅首相はこう表明し構造改革を経済政策の旗印にする意向を示している。諸外国と比べ割高な携帯電話料金の引き下げや、過当競争が指摘される地方銀行の再編、コロナ禍で整備不足が露呈した行政のデジタル化などが目下の主要課題だ。

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の継承を掲げた菅首相だが、主要政策は即効性がある金融政策を主軸に円高是正と株価上昇を狙った前政権とは質的に異なる。内政主体で派手さはないが、抵抗勢力の反発で対立軸が明確になり、世論のウケは良さそうだ。

 一方、菅首相の残存任期は来年9月までのわずか1年間。7年8カ月にわたる官房長官の経験から官僚組織の操縦術にたけているとはいえ、短期政権に官民の身を切る改革はできない。構造改革を目玉に据えたこと自体、長期政権に向けた意欲の表れともいえる。

 ただ政権基盤の構築には来春までに関門がある。まず年内にも見込まれる総選挙で勝利することが絶対条件だ。今冬はコロナ再拡大やインフルエンザとの同時流行が懸念され、緊急事態宣言の反省を生かし景気が「二番底」に陥らないよう医療体制や追加経済対策を準備する必要もある。

 こうしたハードルを乗り越え、「無事に越冬できれば長期政権への橋頭保(きょうとうほ)を築くことになる」(みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)。

 いずれにせよ、目下の国難を乗り越え、景気をコロナ後の回復軌道に乗せなければ構造改革の実現は難しい。菅政権初の組閣は自民党内の「派閥バランス重視の人事」と指摘され、独自色に乏しいのは否めない。菅首相はこれまでに培った「調整役」としての立ち位置を乗り越え、政権トップとして日本経済再生のビジョンと強い指導力を示すことが求められている。(田辺裕晶)

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