チャイナリスクが顕在化 国家間対立の余波、日本企業に キリンHDが豪州飲料事業売却断念

 日本経済への“チャイナリスク”が顕在化してきた。キリンHDが豪中の関係悪化の余波で豪飲料事業の中国企業への売却を白紙に追い込まれたほか、米中対立では、通信機器大手の華為(ファーウェイ)や人気アプリ「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)などの中国企業と取引がある会社に影響が及ぶ。平成24年には尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化を契機に反日デモや不買運動が日本企業への打撃となったが、全く違う形のチャイナリスクへの対応が求められている。

 キリンHDは、28年の中期経営計画で低収益事業の再編を掲げた。該当する豪飲料事業に売却先の検討を続け、ようやく実を結んだところだった。同社は「豪飲料事業の在り方については改めて検討する」としており、戦略の修正を余儀なくされた。売却を認めなかったのは豪州側だが、もとをただせば新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、中国が世界で孤立を深めていることが背景にある。

 最も影響が大きいのは米中対立だ。米国は、個人情報が収集されることによる国家安全保障上のリスクを理由に、華為への輸出禁止措置を導入。華為が半導体などの中核部品を入手することを困難にするためだが、こうした部品を納入する企業にとっては減収要因だ。

 今月13日に施行した規則では、中国5社の製品やサービスを利用する企業は米政府と契約を結べないようにした。中国の特定企業の経営に影響が出れば、禁輸の対象外の部品についても供給量が減るなど、取引先への影響が大きい。

 ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎上席研究員は「米中対立が激しさを増す中、日本企業が米中どちらに与するのか“踏み絵”を迫られる場面が増えそうだ。企業はどちらを選んでも不利益を被る可能性がある」と指摘する。

 新型コロナへの対応では、マスクといった医療品の生産や、自動車部品などのサプライチェーン(供給網)を中国に依存していたことで供給が断たれたケースもあり、再構築が課題になりそうだ。(高橋寛次)

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