所有する車を「物々交換」方式でシェアリング 助け合い精神をビジネスに

【経済インサイド】 所有する車を貸し出した日数分だけほかの人の車を無料で借りられる、「物々交換」方式の新たなカーシェアリング事業が昨年12月、始まった。

 このサービスを運営する電通子会社「カローゼット」(東京都港区)は、「互助の精神で、車を所有する価値を会員全員で高め合う」と狙いを明かし、金銭を払う既存のシェアリングサービスとの違いを強調する。国際特許を申請しており、将来は本、不動産への応用や世界展開も狙う構えだ。

 「すべての会員が、個人所有する資産を平等に提供し合う仕組み。向こう三軒両隣で助け合う日本の相互扶助の文化を、ITの力で現代風に蘇らせたい」

 カローゼットの内藤丈裕社長は、サービスを通じて提唱したビジネスモデルの新概念「OPA」(オーパ。オープンパーソナルアセットの略)について、こう語る。

 一般的な料金制の個人間カーシェアは、車を持たなくても登録でき、所有者に料金を払うことで利用する。これに対し、所有者同士が会員というOPAの考え方に基づくサービスの“対価”は、金銭ではなくモノのギブアンドテイクによる「借りる権利」だ。

 カローゼットでは、スマホアプリ(現在はiPhone版のみ)を通じて、会員に対して自分の愛車を一時貸し出す。自分の資産を他人に貸すことで初めて、後日、どの会員からでも無料で借りられる権利(1日単位)が発生する-というのが大きなポイント。金銭のやり取りはなしだ。

 安心をさらに担保するため、自動車保険のうち、他人の車で事故をしても補償される「他車運転特約」の契約を会員の条件にしている。

 ところで、カローゼットは、どうやって利益を得るのか。OPAの仕組みでは、後日清算を現金で行う「前借り」制度がカギとなる。

 会員が車の前借りを1日した後、30日以内に愛車を貸せなかった場合、4980円をカローゼットに支払うことで清算する。この清算金と、会員が支払う月額基本料780円(令和2年5月末まで無料)が収益源になる。

 また、カローゼットは自動車販売店を「プロオーナー会員」として登録し、試乗車の提供を受ける。車種を増やすことで「場」の魅力を高めて会員を取り込むとともに、販売店の商機にもつなげる。

 内藤社長は「(利用者からは)『トランク内のゴルフ道具を一緒に貸そう』『今日は落ち着いた色の車に乗りたい』など、多様な声がある。所有していることが意味を持ち、みんなの暮らしを豊かにできる」と、OPAの意義を語る。

 国内のカーシェア市場は、拡大の一途だ。公益財団法人「交通エコロジー・モビリティ財団」の調査によると、平成14年に全国で20台ほどに過ぎなかったが昨年春には3万4000台を超え、会員は162万人となった。

 レンタカーのように事業者が貸す形に加え、事業者を仲介役として個人間で貸す形も増加している。昨年10月には、トヨタ自動車が販売店などを拠点に、カーシェアの全国展開を本格的に始めた。関係者は「需要はさらに伸びるだろう」とみる。

 一方で、シェアをめぐるトラブルや不安も出てきた。政府の「シェアリングエコノミー検討会議」は、シェアサービス全般に関する報告書で、利用時の懸念事項調査結果として「『事故やトラブル時の対応』が30%前後で高止まりしている」と指摘している。

 悩みは世界共通のようで今夏、シェアサービスに関する国際規格策定の議論が国際機関で始まった。

 こうした状況に対し、電通社員として自動車メーカーのホンダの担当を18年間経験してきた内藤社長が提案したのがOPAだ。内藤社長は「お金だけが介在するシェアの仕組みより、車好き同士で交換した上でならマナーの心配も少ない。“愛車”を所有し続ける意味や価値も高まるのではないかと考えた」と語る。

 OPAの仕組みは、同じマンション内での本や趣味の品の交換といったことにも応用できる。借り手側から預けられた商品に「意図せず偶然に出合う喜びも生まれる」(内藤社長)という。

 国際特許は、権利のやり取りなどを正確に記録するソフトウェアの知的財産として申請中という。協業先の一つで、ニュータウン内などでのカローゼット導入を図る三菱地所の関係者は「OPAはグローバルに展開できるのではないか」と期待する。

 まったく新しい概念ながら、日本ならではの古くて新しい“第三のシェアモデル”がビジネスとして広まるか、注目されそうだ。(経済本部 今村義丈)

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