豚コレラワクチンを空中散布 積極活用に転換した理由

 7月以降、養豚業者からの要望も増えてきたうえ、養豚が盛んな関東地方でも、埼玉県で感染豚が見つかった。感染が拡大すれば、大消費地の東京への影響は避けられず、「一気にワクチン接種実施の流れに傾いた」(農水省幹部)という。

 農水省は、イノシシの捕獲などでウイルスの封じ込めを狙ったが、結果的に失敗に終わった。農水省の担当者は「予防的な対応として、すでに持っている消費期限がある備蓄ワクチンを使わなかったことを、あとで振り返ったときに後悔したくないとの思いもあった」と打ち明ける。備蓄ワクチンを効果的に活用できるぎりぎりのタイミングでの方針転換だった。

 農水省は今後、野生イノシシや飼育豚に陽性反応を示す県が出てくれば、すみやかに対応する。「リスクに応じて、速やかに『ワクチン接種推奨地域』と示したうえで、あとは県にワクチンプログラムをつくってもらう」(農水省幹部)という。

 現在、心配なのは風評被害という。ワクチン接種の実施を機に、輸入業者などが「海外産豚肉の方が安心」といったセールストークで売り込みを図る可能性があるからだ。また、学校給食で採用を控える懸念もあることから、農水省などは安全性をアピールしていきたいという。

 また、前農水相の懸念通り、ワクチン接種に伴って「非清浄国」となることによる影響も大きい。これまで米国、欧州などは「発生している県が限定的だ」として、日本産豚肉の受け入れに理解を示してきた。しかし、国際ルールで定める「清浄国」から転落することで、「輸出の検査工程が増えて、手続きが煩雑になるのは事実」(農水省幹部)。負担はかなり増えるとみられる。

 農水省は、2国間協議を通じて日本の安全管理体制を説明しており、すでに大口輸出先の香港、シンガポール、マカオ、ベトナムなどとは輸出を継続することで合意。今後は、欧米にも理解を求めていく。(経済本部 飯田耕司)

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