豚コレラワクチンを空中散布 積極活用に転換した理由

【経済インサイド】

 農林水産省は11月下旬、家畜伝染病「豚コレラ(CSF)」対策として防衛省の協力を得て、自衛隊のヘリコプターで野生イノシシ向けのワクチン入りの餌を空から散布する実験を群馬県の畜産試験場で実施した。これまで手作業でワクチン入りの餌を地中に埋めてきたが、空からも散布して作業を効率化する。

 農水省は、豚にワクチンを使った場合の輸出への影響を考慮してワクチン使用に消極的だったが、ここにきて積極的なワクチン活用に方針転換した。どうしてなのか。

 「相当の高さから散布しても、ワクチンに目立った損傷は見られなかった」

 11月28日、江藤拓農林水産相は、空中散布の実証実験結果についてこう述べた。ワクチンの散布は、群馬県東吾妻町にある畜産試験場の牧場で実施された。その結果、山岳地帯の風速などを考慮し、狙った場所に散布するためには、高度30メートルから60メートルが適当だという結論に至ったという。

 農水省は今回の結果を踏まえ、散布に適した高度や速度を検証し、具体的な散布地域を自治体と協議して決めた上で、今後、本格的に実施する方針だ。

 今回、空中散布に踏み切るのは、飼育豚へのワクチン接種との相乗効果で、豚コレラの蔓延を早期に防げると判断したからだ。

 農水省担当者によると、「ヘリとセスナでまく欧米の事例を参考にして、より効果を高める狙いがある」と話す。

 ただ、前農水相の吉川貴盛氏は、豚にワクチンを使った場合、豚コレラを撲滅していると国際機関が認定する「清浄国」への復帰に時間がかかり、輸出に支障が出かねないなどとして、ワクチン使用に慎重な姿勢を貫いてきた。

 この姿勢から一転、ワクチンを利用するのは、今年7月に三重県、福井県で豚コレラに感染した豚が発生するなど、一気に広がりをみせたからだ。現在も群馬、山梨の両県で、野生イノシシの感染が確認され、収まっていない。

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