富裕層の海外マネー監視強化 課税逃れを抑制 政府・与党検討

 政府・与党は海外に資産を持つ富裕層を対象に課税逃れへの監視を強める。海外の金融口座の取引履歴を保存するよう求めることで、富裕層が行った資金のやりとりや日本以外で得た収入など“海外マネー”の実態の正確な把握につなげる。対象となるのは海外に5千万円超の資産を持つ個人。富裕層の自主的な取引履歴の保存を促すための税制の仕組みを年末までにまとめる令和2年度与党税制改正大綱に反映させることを目指す。

 日本に居住する個人が海外で収入を得た場合、日本の税務当局に収入を報告し、ルールに従って納税する必要がある。

 現行制度では、海外に5千万円超の資産がある個人は、毎年末の海外資産の残高を示した「国外財産調書」を税務署に提出することが義務付けられている。ただし金融口座の残高が増えていたとしても、不動産や株式の売却などによる収入があったためか、課税の対象ではない自身の別口座からの入金などがあったためかの区別はつかず、課税逃れの摘発につなげることは困難だった。

 検討中の新制度では、富裕層に金融口座の取引履歴を保存するよう要請。税務当局が海外収入について申告漏れの疑いを見つけた場合、履歴の提出を求める。富裕層が提出した履歴から申告漏れが発覚した場合は、加算税を軽減する仕組みを税制改正でつくり、富裕層の自主的な履歴の保存を促す。

 一方、富裕層が履歴の提出に応じなかった場合は申告漏れの裏付けは難しくなる。しかしその後の調査で裏付けられた場合は加算税を重くすることで、不当な課税逃れを抑制する。

 新制度では取引履歴の保存を義務化すれば、適正な申告を行っている富裕層にまで事務負担を強いることにも配慮。取引履歴の保存は自主的な取り組みを呼び掛けるにとどめる。

 国外財産調書制度は平成26年に始まって以来、提出件数や金額は増加傾向にある。29年には9551件、3兆6662億円の提出があった。

 富裕層の海外マネーをめぐっては、世界各国の金融口座情報が自動的に交換される「CRS(共通報告基準)」の国内運用が昨年から始まり、国外財産調書などを突き合わせ、税逃れの解明を目指す取り組みもスタートした。新制度が導入されれば、こうした動きが加速していきそうだ。

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