日本の「はんこ文化」が逆風 デジタル化の対応苦慮 「脱はんこ」を推進する企業も

 日本社会に根付く「はんこ文化」が逆風にさらされている。土地購入や婚姻届といった人生の節目で必要な印鑑だが、最近は手続き簡略化のために「脱はんこ」を推進する企業も。国も行政手続きをオンライン化する「デジタル手続き法」を成立させるなど、ペーパーレスでの効率化は時代の流れだ。一見、相反するデジタル化とはんこ。両立できるのか。(桑村朋)

「脱はんこ」議論 

 「共栄のため、知恵をしぼる」。9月12日、竹本直一IT担当相は就任会見で、利害対立があるとされる印鑑とデジタル化の両立を図る考えを表明した。

 ただ、自身は「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)会長の顔も持つ。両立場の整合性への質問には、「どう調和していくかという視点で工夫はできる」と述べるにとどまった。

 脱はんこ議論は昨年1月、国が電子政府実現への行程を描いた「デジタル・ガバメント実行計画」を公表後に沸騰。押印を「デジタル化の障壁」と表現、業界団体の反発を呼んだ。

起業時、印鑑不要に

 今年5月成立した「デジタル手続き法」は当初、法人設立時の印鑑義務や本人確認時の押印の廃止が盛り込まれたが、業界側が「実質的な印鑑不要論だ」と反発。関係条項削除を求める要望書を提出し、「印章市場が失われれば(はんこ店が)たちまち生活できなくなる」と再考を促した。結局、条項は削除されて同法が成立した。

 一方、昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略」には、来年度中に法人設立時の印鑑義務の任意化を実現すると記載。法務省は来年の通常国会で商業登記法を改正し、オンライン申請だけで起業できるよう取り組む方針だ。

決済電子化

 自治体や企業で必要とされてきたはんこだが、「もらうまでに時間を取られて生産性が落ちる」「押印のための押印は意味がない」などの不満も少なくない。

 行政でいち早く脱はんこに動いたのが千葉市。約3千種類の手続きで必要だった押印の必要性を平成26年に見直し。約2千種類を署名か記名押印の選択制に改めることを決めた。茨城県も昨年4月に決裁電子化を始め、13・3%だった電子決裁率が同年7月にほぼ100%を達成。銀行や不動産業界でも印鑑を廃止する動きがみられる。

 武蔵大の庄司昌彦教授(情報社会学)は「日本企業は三文判のようなセキュリティーの甘いはんこを使い、何重もの決裁のため余計な時間や紙が発生するケースが多い」とデジタル化による効率化の意義を説く。その上で、「この議論は、不要な手続きの見直しという観点からスタートすべきだ。結果として生き残る貴重な印鑑もあるはずだ」と主張している。

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