「ブレない双眼鏡」 ジャニーズファンの高評価で隠れヒット中

 「CANONからめちゃくちゃ軽い8倍と10倍の防振!」

 9月19日午後、キヤノンが手ブレ防止(防振)機能付き双眼鏡「BINOCULARS(ビノキュラーズ)」シリーズの新製品で、倍率8倍の「8×20IS」、10倍の「10×20IS」をそれぞれ11月上旬に発売すると発表すると、それに反応してツイッターへの書き込みが相次いだ。目立ったのが“ジャニヲタ”とも呼ばれるジャニーズ事務所所属のアイドルを追いかける熱心なファンからの書き込み。手ブレ防止機能付きの双眼鏡は、ライブ会場や劇場でイチ押しのアイドルをウオッチする強力なアイテムとなっている。

 東京ドームや横浜アリーナといった巨大な会場ともなると、スタンドの観客席らステージまでの距離が100メートル以上となるのもザラ。高倍率の双眼鏡を使うことも多くなるが、倍率が10倍を超えると手ブレが気になるといわれており、手ブレ防止機能は必須となってくる。

 ただ、手ブレ防止機能の付いた双眼鏡は大型で重く、価格も10万円以上と高額になりがち。そうした市場に小型・軽量で、価格も数万円の製品をいち早く投入したのがキヤノンだ。平成9年9月に発売された倍率10倍の「10×30IS」は重量600グラムで、希望小売価格は6万5000円に抑えた。「10×30IS」以降も、同社は小型・軽量タイプを順次発売している。

 今回、新製品の開発を担当したイメージコミュニケーション事業本部ICB光学事業部の家塚賢吾課長は「当初はバードウオッチングや天体観測のニーズが一般的だったが、数年前からコンサートで使われているという話が出てきて、ここに来てSNSで評判が一気に拡散した」と驚きの声を上げる。「特にジャニーズファンが多いようで、『ブルーレイ画質で見ているようだ』との書き込みもあった」という。

 こうしたジャニーズファン需要にも支えられ、同社の小型・軽量タイプの手ブレ防止機能付き双眼鏡は「平成25年と比べて国内市場で2~4倍くらい売れている」(家塚氏)。光学機器市場はスマートフォンの普及でデジタルカメラの需要が冷え込む中、双眼鏡は右肩上がりの珍しい分野となっている。

 特に日本市場での伸びが著しいという追い風の中、さらにジャニーズファンらの支持を得ようと開発したのが新製品の2機種だ。「8×20IS」は手ブレ防止機能付き双眼鏡では世界最軽量の420グラムを実現し、「10×20IS」もほぼ同じ430グラム。新製品は応援の特製うちわやペンライトを片手に持ちながら、双眼鏡をのぞくことも可能となっている。

 希望小売価格はそれぞれ6万5000円、7万4000円(税別)と10万円を切った。手ブレ補正機能付きの双眼鏡は、補正機能のない双眼鏡に比べれば高価だが、新製品を試したジャニーズファンらからは「一度使ったらやめられない」との声ばかりだ。

 ICB光学事業部の篠原玲子さんは「女性は双眼鏡の真横の部分を持つことが多いので、指が引っかかりやすいようボディーの形状も工夫した」と、“ジャニヲタ”の女性らに配慮したこだわりを明かす。

 こんな成長市場を他社も黙ってみているわけではない。光学機器メーカーのビクセンとケンコー・トキナーは29年11月、それぞれ小型・軽量タイプの手ブレ防止機能付き双眼鏡へ参入。ビクセンの「アテラ防振シリーズ」の「H12×30」(希望小売価格6万8500円、税別)は12倍の高倍率を持ちながら422グラムの軽量設計で人気を集める。今月11日にはカラーバリエーションに従来のベージュにブラックも追加された。

 昭和55年から本格仕様の防振双眼鏡を発売している富士フイルムも10月1日、11月29日に初めて小型・軽量タイプの「TS12×28」(倍率12倍、税別7万円前後)、「TS16×28」(倍率16倍、税別8万円前後)の2機種を発売すると発表。「優れた防振機能を搭載し、ライブ・コンサート鑑賞などで快適に使用できる」としている。

 にわかに乱戦模様となってきた手ブレ防止機能付き双眼鏡市場だが、いかにジャニーズファンら熱心なユーザーのお気に入りになれるかが今後の成長のカギを握ることになりそうだ。(経済本部 桑原雄尚)

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