貿易協議 米、中国構造問題先送り 包括合意の実現遠く

 【ワシントン=塩原永久、北京=三塚聖平】トランプ米政権が11日に表明した中国との「第1段階」の部分合意は、これまで貿易協議で意見の隔たりが大きかった中国による経済構造改革などの根本解決を先送りし、米国産農産物購入といった特定分野での妥結の演出を優先した。約15カ月に及ぶ貿易戦争が米景気に影を落とす中、核心的利益に関わる分野で折れない中国に米側が根負けして譲歩した側面も浮かぶ。

 トランプ大統領は11日、ホワイトハウスに招いた中国の劉鶴副首相と握手し、米中貿易摩擦の緩和が「世界平和と繁栄によいことだ」と強調した。

 ただ、そんなシーンには既視感もある。トランプ氏は昨春にも劉氏と握手して妥結を演出。今春にも「合意間近」と伝わったが、その後に対中制裁の強化を決めた経緯がある。

 成果を強調するトランプ氏だが、「中国は何ら大きな譲歩をしていない」との指摘も。トランプ氏は中国の技術移転強要の是正が「第1段階」の合意に盛り込まれるとしながらも、第2段階まで交渉が続くと説明。為替問題も合意に盛り込まれたが、実効性の薄い内容となる公算が大きい。

 中国側は「原則的な問題については絶対に譲歩しない」(劉氏)という姿勢を強め、産業補助金撤廃といった主権や核心的な利益に関わる要求を突っぱねていると伝えられる。農産物購入や金融市場開放などの分野では譲歩の構えを見せ、11日に中国証券監督管理委員会が証券や先物取引での外資参入規制の撤廃を前倒しし、2020年1月から順次実施すると発表した。

 米政権にとり、今月15日や12月15日に予定する対中制裁関税を凍結すれば、個人消費の下押し懸念が回避できる利点もあり、来年の大統領選を前にトランプ政権が中国との部分合意を急いだ可能性がある。だが11月中旬の正式署名に持ち込むハードルは少なくない。

 米産業界は包括的な最終合意に向けて「重要な仕事が残っている」(米商工会議所)と注文を付ける。中国側は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の禁輸措置緩和や既に発動済みの制裁関税の撤廃を重視し、共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)も「貿易戦争の終結はすべての追加関税が取り消されることを意味している」とクギを刺す。

 香港情勢などを含め、周辺環境は複雑さを増しており、米中協議の行方は最後まで予断を許さない。

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