ラグビーは快進撃も…経済は世界の“どん尻” 日本経済の主導者は「国家・国民を富ませる使命感」が欠如

お金は知っている

 ラグビー・ワールドカップでの日本代表チームの快進撃ぶりを目の当たりにしながら、ついため息が出た。経済のほうは何とも世界に誇れる成果はゼロだ。なのに、政官財界やメディアに危機感はないのか、と。

 ラグビーと経済の共通項は国家対国家だ。国際舞台で、関係者が国のプライドをかけて一丸となり、より高く成長しようと、最適な戦略を練り上げ、忍耐強く、慢心することなく挑戦していく。

 事実、経済の世界とは成長に向けた国家間競争である。でなければ、「アメリカ・ファースト」のトランプ大統領が選ばれることはなかった。中国の習近平政権が経済膨張の野望に執着し、米国からの貿易制裁に対し対米報復で応えることもないはずだ。

 ところが、わが国経済を主導するエリートたちは、自身の利害しか念頭になく、経済の成長、つまり国家や国民を富ませなければならないという使命感が欠如している。国内総生産(GDP)の過半に相当するカネを支配する財務官僚は財政を家計簿の帳尻合わせと考え、経済成長を犠牲にしてでも増税と緊縮財政に執着する。政治家は消費税増税で家計から吸い上げたカネの一部を社会保障に回すことで財務官僚と妥協する。

 1997年度の消費税増税をきっかけに始まった慢性デフレの中、歴代の政権は財政の緊縮路線を踏襲してきた。景気回復で頼みとするのはもっぱら円安による輸出増である。安倍晋三政権はアベノミクスを打ち出し、当初はインフレ率2%、実質2%、名目3%以上の経済成長を目標としたのだが、積極財政は初年度のみで、あとは緊縮財政と消費税増税の繰り返しである。

 脱デフレも成長率も達成にはほど遠い。それどころか、首相官邸から伝わってくるのは、「現状でよし」とする満足感である。経済とは国家の存亡を賭けた争いとの緊迫感は皆無のようだ。

 グラフは経済協力開発機構(OECD)の経済アウトルックが示す2020年までの実質経済成長率見通しである。パリに本部を持つOECDには欧米、日本、韓国など35カ国が加盟しており、世界最大のエコノミスト集団でもある。その対日政策提言は日本の財務官僚の意のままだが、経済予測自体は実勢に則している。

 一目瞭然、日本の実質成長率はOECD加盟国中、最悪の水準で推移している。実質2%の成長率はOECD加盟国なら最低ラインのようなものだが、日本は18年の0・7%から19、20年と0・6%台へとさらに落ち込む。11年頃、ユーロ危機のあおりで財政破綻したギリシャですら2%近傍だし、英国の欧州連合(EU)離脱騒ぎのとばっちりを受けるユーロ圏は19年までは2%台をクリアしている。対中貿易戦争の当事国、米国は減速しても20年に2・5%の成長である。日本の場合、10月1日以降明らかになった一連の景気関連データはことごとくOECD予測すら楽観的と思わせるほど、弱い。無策・悪策の帰結である。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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