消費税10%、税率を聖域化するな 編集局次長兼経済本部長 船津寛

 いよいよ消費税率が引き上げられた。年間約4・6兆円の増税である。いつの世も税金が増えるのはつらい。野党が言うように、「むしろ今こそ、消費税率の引き下げを」と思わないでもない。そうなれば、どんなにわが家の家計も助かることか。

 およそ、もろ手を挙げて歓迎する国民はいないと思われる今回の消費税率引き上げだが、政治的には、8年越しの「宿題」をようやく果たした形だ。

 平成24年の税と社会保障の一体改革に関する「三党合意」を出発点に、消費税10%は既定路線となっていた。しかしこの間、当時の民主党が政権を失い、合意を引き継いだ自民党の安倍晋三政権も2度にわたって増税を延期した。

 今回に限らず、消費税の議論は、大きな政治的エネルギーを要してきた歴史がある。しばしば国政選挙の一大争点となり、ときには政争の具としても利用されてきた。

 大平正芳、竹下登、細川護(もり)煕(ひろ)、橋本龍太郎、野田佳彦…。消費税(一般消費税、国民福祉税)導入を訴え、あるいは税率引き上げを目指したがゆえに、政治的な致命傷を負った首相も多い。

 いつしか「消費税を語ることはタブー」というムードすら漂うようになり、選挙ごとに争点として浮上するわりには、本質的な議論が交わされてきたとは言い難い。与党は国民に「痛み」を語らず、野党は「攻撃」の材料に利用することに終始してきた。

 ちなみに日本の消費税のモデルとなった欧州の付加価値税はその導入以降、欧州連合(EU)加盟国で100回以上の標準税率の変更がなされている。世界的には、経済環境の急変などを受けて、税率の引き下げを実施する国も少なくない。

 文字通り「消費」に対して課税する消費税は本来、もっと柔軟な税制であるはずだ。上げるも下げるも、その税率を聖域化すべきではない。

 今回の制度変更で、軽減税率やポイント還元によって、多くの実質税率が並立することになる。同じ商品でも、購入場所や方法で税負担が異なることが当たり前になる。

 これはいい機会かもしれない。本当に今の税率が正解なのか、公平なのか。そのことを考えるきっかけになればと思う。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ