消費増税「駆け込み需要」…今回は“気配感じない”2つのワケ

 【マンション業界の秘密】

 10月1日からの消費税引き上げが迫ってきた。2014年4月に8%に上がった時や、以前の3%から5%になった時、マンション業界では駆け込み需要に沸いた。短期間で一定戸数売れたのだ。もちろん、その反動もあり、引き上げ直後の数カ月から半年程度は、販売が極端に落ち込んだ。

前2回はあったが

 しかし、今回は前2回とはやや様子が違うように思える。そろそろ始まってもよさそうな駆け込み需要の気配がほとんど感じられない。

 実はこの予兆は3月にも現れていた。10月1日時点で未完成で、それ以降に建物が完成して引き渡される物件については、3月末までに購入契約を終えていれば8%のままという規定がある。

 ところが今年の3月時点で起こるべきだった前段の駆け込み需要は、ほぼなかった。あの頃は消費税増税先送りを公約にした衆議院解散によるダブル選挙が取り沙汰されていた。駆け込み需要が起こらないのはそのせいか、とも考えたが違ったようだ。

 なぜ、今回は前2回のような激しい駆け込み需要が起こらないのか。

 大きく2つの理由があると考えられる。まず、新築マンションの市場規模が小さくなってしまったということ。

 前回5%から8%に消費税が上がった時に比べて、マンション購入の適齢期にある30代、40代の人口が少なくなっている。特に団塊ジュニアは40代の後半に入って、マイホームを買うべき人は買ってしまっていると想定できる。

 もう1つの理由は、特に首都圏で価格が高くなり過ぎたこと。東京の都心エリアでは、一般的な給与所得者ではとても買えない水準にまで価格が高騰した。それこそ、消費税の増税分などかわいく思えるほどだ。

遠隔地では発生か

 首都圏でもやや遠隔の郊外ではさほど価格は上っていないので、そういう場所の物件には、多少の駆け込み需要は発生するかもしれない。近畿圏でも一部エリアを除いて価格の高騰はそれほどでもないため、前回とまではいかないにしろ、首都圏郊外と同様の現象が起きる可能性がある。

 消費税増税は、ほぼ確実に景気後退を招く。今回はさまざまな軽減措置や、流通やカード関連の企業による「増税分還元」のサービスが用意されている。それによって消費者が感じる痛みは前回ほどではないかもしれない。

 しかし、軽減措置が受けられないほとんどの業種の企業間取引には、増税分はそのままのしかかってくる。折から世界経済の後退が懸念されている時期である。

 20年3月期の企業業績はかなり悪化するだろう。それは個人所得にも反映される。そうなれば当然、新築マンションの売れ行きや中古物件の動きにも影響するはずだ。

■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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