財務官僚の出世にも影響 消費税率10%引き上げは財政再建へ悲願

【迫る10%】消費税を問う(2) 

 7月22日朝。参院選で自民・公明の与党が勝利したことを報じる新聞・テレビのニュースに、財務省関係者はほっと胸をなで下ろしていた。「これで間違いなく上がる」。与党の公約は、消費税率10%への予定通りの引き上げだった。

 財務省にとってもそれは“悲願”であり、今回の参院選は正念場だった。10%増税は経済情勢を理由にしながらも2度延期された。まず平成27年10月の予定が29年4月となり、さらに令和元年10月まで延びた。

 野党は軒並み増税に反対だった。「生活が厳しい中、増税なんてありえないじゃないですか、財務省さん」。参院選で躍進する、れいわ新選組代表の山本太郎は5月、東京・霞が関の財務省前で演説をぶった。

 野党が勝てば増税はまた延期されていたかもしれない。「やっと実現するんだな」。別の財務省関係者も三度目の正直に感慨を抑えられなかったが、それも無理からぬ論理と野心が財務省と官僚たちに見てとれる。

 「消費税増税に汗をかき貢献することは、財務官僚にとって、出世の大きなポイントの一つだ」。同省の事情に詳しい自民党の国会議員は、こう指摘する。

 税収増と歳出削減で借金を減らす財政再建は、財務省の掲げる“使命”だ。景気に左右されず広く税金を集められる消費税を拡大し、増税で歳入が伸びれば差配できる予算が増える。政治家や官庁に、より大きな影響力を及ぼすことが可能となる。お金を握る財務省が長年、「最強官庁」と呼ばれてきたゆえんだ。

 消費税への貢献が評価される-。それを鮮明に人事で裏付けたとされるのが、平成に就任した事務次官(25人)のうち次の3人だ。

 1人目は尾崎護(まもる)(次官は4~5年)。竹下登政権が元年4月に消費税を導入した際の主税局長だ。次に小川是(ただし)(同8~9年)。消費税導入前の課長時代、似た仕組みの「売上税」構想に関わった。最後は薄井信明(同11~12年)。9年の3%から5%への増税を主税局長として指揮した。

 財務省では、予算編成を仕切る主計局長が次官に昇格するケースが多いなか、3人は税制を扱う主税畑の「上がりポスト」である国税庁長官から次官に就いた。異例の人事だが、それだけ貢献度合いが評価された証拠だろう。

 だが財務省は、本来は財政再建には増税とセットとなる歳出削減ではなく、「増税を実現するため、歳出拡大を推し進める」という“自己矛盾”も抱えた。

 8%への増税時には経済が減速したこともあり、令和元年度予算には、増税に備えた景気下支えのため「臨時・特別の措置」が2兆円超盛り込まれた。現金を使わずに買い物するキャッシュレス決済へのポイント還元策などが目玉だ。

 制度設計を取り仕切った主計局長の太田充とタッグを組んだのは、首相の安倍晋三と近く、政権の成長戦略を主導してきた経済産業省の経済産業政策局長、新原浩朗(にいはら・ひろあき)だ。ただ、「歳出に糸目をつけない“経産省的”な太田さんのやり方は、財政再建を目指す財務省の本道から外れている」との冷ややかな声が、財務省内でささやかれている。

 財務官僚はもともと歳出拡大に前向きな積極財政派の首相には嫌悪感がある。元首相の田中角栄は大蔵相(現財務相)を務めたが、首相に上り詰める直前に、「日本列島改造論」で高速道整備など交通・情報の全国的ネットワーク整備をぶち上げて積極財政政策を唱え、省内では批判的な声も強まった。

 今回の景気下支え策も臨時的な措置とはいえ、増税による歳入拡大の効果が大きく損なわれる恐れもある。前出の自民党議員はこう語る。「今回は『ハナマル』の高評価を与えられない。歳出拡大策まで必死で用意した無理やりな増税だからだ。携わった人たちは、昔ほど認められるのだろうか」=敬称略

【用語解説】財務省

 平成13年の省庁再編で旧大蔵省を改編して発足。金融行政は、新設された「金融庁」へ全面的に移された。財務省の本省には、主な内部部局として予算編成を担う「主計局」、税制を企画立案する「主税局」、国債の発行など担当する「理財局」などがある。財務省の外局としては、課税や税の徴収を行う「国税庁」がある。

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