消費増税迫る…奥の手は「高回転ずし」くら寿司、スシローの戦術

 「デフレの勝ち組」といわれる回転ずし業界が、コスト削減に奮闘している。回転ずしは、そもそも薄利多売のビジネス。そのうえ近年は、世界的な水産資源の争奪に伴う材料費高と人件費上昇が重しになってきた。「一皿100円」といった手ごろな値段をキープして業績を伸ばすには、業務の効率化が不可欠だ。客の満足感を上げつつ「回転率」をどう引き上げるのか。10月に消費税増税が迫る中、業界2強に位置する「あきんどスシロー」と「くら寿司」が先手を打ち出した。

 滞在時間短縮「5分」

 業界2位のくら寿司は、7月から来店前でも客から注文をスマホで受け付けるサービス「スマホdeくら」を一部店舗でスタートした。客が席に着いてから、商品を選んで注文する時間を短縮できる効果を期待。田中信副社長は同月の発表会見で「1皿100円を維持するには、コストの上昇への対応が必要だ」と強調した。

 スマホによる事前注文は9月末までに全約450店舗の6割に当たる約250店に導入する。複数人で来店した客が同時にスマホで注文もでき、店の座席にあるタッチパネルで注文を受け付けるよりも、早く商品が届けられるという。

 客の滞在時間はおよそ「5分」短縮されると試算され、同社の広報担当者は「快適に食事を楽しんでもらった上で、回転率の向上につなげたい」としている。

 スマホによる持ち帰り注文は11月上旬までに全店に導入する方針で、10月の消費税増税後も8%の軽減税率が適応される持ち帰り商品は、需要が大きいと見込まれる。

 すし店めぐる3重苦

 すし店業界をめぐる経営環境は決して、楽なものではない。根強い節約志向に加えて魚価、人件費の上昇の「3重苦」にある。

 世界の水産物消費量は、中国やインドネシアなど新興国を中心に激増。すしネタで人気のマグロやサンマなどの魚の価格は高止まりが懸念される。

 東京中央卸売市場で扱われたまぐろ類(クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダの冷凍品)の1キログラムあたりの年平均価格は約10年間で、20%近く上昇した。日本のサンマ漁獲量は12~24年は20万トン以上で推移したが、中国が公海での操業を本格化した25年以降は10万トン前後に低下。水産資源の管理は重大な国際問題になっている。

 国内では、政府が推し進める最低賃金の引き上げと人手不足で、人件費がアップ。賃上げの恩恵が消費にまわればよいが、食品価格や燃料費が高騰し、実質ベースでの賃金は伸び悩み、家計の財布のひもは固い。

 東京商工リサーチの調べでは、平成30年の負債額1千万円以上のすし店の大型倒産は27件にのぼり、前年より3件増え、2年ぶりに増加に転じた。回転ずし店の倒産も目立ち、大手との競合にさらされた資本力の乏しい地方の企業が追い込まれた。「ごちそう回転寿し栄助」の店名で、新潟県を中心に回転寿司店を経営していた「創栄」(新潟県新発田市)は今年1月、事業を停止した。「やや高めの価格設定であったこともあり競争は激しさを増し、業績は下降線をたどっていた」(東京商工リサーチ)という。

 スシローの次世代店舗、「自動土産ロッカー」

 「低価格の回転ずしは、ほかのチェーンとの差別化が難しい。省力化や回転率の向上を進めて価格を維持することが求められている」。外食産業に詳しい「エヌピーディー・ジャパン」の東さやか・シニアアナリストはこう指摘し、「1皿100円」の価格帯を維持できなければ、「イメージが悪化し、客が離れる可能性が高い」と話す。

 10月には消費税率が10%に引き上げられ、出費を抑える動きが強まるのは必至だ。大手といえども油断はできない。

 令和元年9月期連結業績予想を上方修正し、好調な業績が続く「あきんどスシロー」などを運営する最大手のスシローグローバルホールディングスもコスト削減に力を入れる。

 同社は、今年6月「次世代型店」のモデルに位置付けた店舗を兵庫県伊丹市にオープンさせた。

 回転ずし業界初という画像認識技術を搭載したカメラを使った自動会計のシステムを導入。カメラはレーンの上部に設置され、皿をレーンから引き抜くと、請求額に算入される仕組みだ。皿の色と数を専用端末で読み込んでいた従業員の手間を省いた。

 また持ち帰り客向けに、スマートフォンで事前予約・決済した後、店舗でQRコードをかざすだけで、商品が受け取れる「自動土産ロッカー」を備えた。

 同社の広報担当者は「総労働時間の短縮を目指し、効果を見た上で他の店舗にも導入するか検討していく」という。

 庶民のごちそう「回転ずし」のおいしさと低価格を守り続けるには、最先端の情報通信技術が欠かせなくなっている。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ